温和に答えるが、京は「ですが」とまだ反論を重ねてくる。
「姫を武田の姻戚に、と言う話になる可能性も」
「まあ、そうなる可能性は高いのぅ」
頭の中でなんとなく思っていた事を出されたので、わらわは正直に答えた。
「今の時代、姫達は皆国政の道具の一つだからの。利用しない手はあるまいよ」
苦笑気味で告げた瞬間に、京は不快感を露わにさせる。微塵も隠そうとせずに、わらわに不快感を見せつける。
全く。こういう話になると、すぐこうなる。いつもの冷静な顔はどこへやら、だな。
「そんな顔をするでない、京。致し方ない事なのだ。わらわも充分に覚悟しておる事だから、何も心配する事はあるまい」
「大いにあります」
不機嫌且つ冷ややかな声が、間髪入れずに噛みつく。よく見れば、京の目元がぴきぴきと引きつっていた。
「姫を利用するだけでなく、勝手に姻戚関係を結ぼうなぞ。許せぬ事です」
「まあ、そう思うてくれて嬉しいが。姻戚関係になっても、悪い話ばかりではないのじゃ。美張を攻め落とそうと言う気は起こさなくなるのだからな。武田が一番危惧する存在であったから、これほど良き事はあるまい。
織田も美濃の斎藤と姻戚関係になったのだから、うちも武田と姻戚関係になって、結びつきを強めれば他とも充分に戦えるだろうしのぅ」
「ですが、それでは姫が」「姫様、お持ち致しました」
京の反論を遮る様に、総介が頼んだ物を持ってきた。そしてそれを淡々と、わらわの文机に並べる。
総介が帰ってきた事により、京は口をつぐみ、いつもの冷静な顔に戻った。だが、わらわを見据える瞳は強く何かを訴え、自分の願いを聞き入れて欲しいと言う風に見えた。
「京、続きを申してみるが良い」
わらわが遮られた先を言う様に促すが、文机の用意が終わり戻ってくる総介を軽く見てから、畳の網目に目を落とし「いえ、何も」と素っ気なく答えた。
「姫様。ご用意が出来ましたので、どうぞお使い下さい」
総介がわらわを文机の方に「どうぞ」と促す。
わらわは「あ、ああ」と後ろ髪を引かれる思いで移動し、文机で武田に宛てた文を書いた。
そして京はその間、何も言わなかった。書き終わり、京に「早急に武田の元に渡してくれるか」と頼んだ時も。
ただただ端的に「御意」と答えて、頼まれた事をきっちりとやるだけ。
わらわがもう一度、京に尋ねようとしたが。総介が柔和な笑顔で
「姫を武田の姻戚に、と言う話になる可能性も」
「まあ、そうなる可能性は高いのぅ」
頭の中でなんとなく思っていた事を出されたので、わらわは正直に答えた。
「今の時代、姫達は皆国政の道具の一つだからの。利用しない手はあるまいよ」
苦笑気味で告げた瞬間に、京は不快感を露わにさせる。微塵も隠そうとせずに、わらわに不快感を見せつける。
全く。こういう話になると、すぐこうなる。いつもの冷静な顔はどこへやら、だな。
「そんな顔をするでない、京。致し方ない事なのだ。わらわも充分に覚悟しておる事だから、何も心配する事はあるまい」
「大いにあります」
不機嫌且つ冷ややかな声が、間髪入れずに噛みつく。よく見れば、京の目元がぴきぴきと引きつっていた。
「姫を利用するだけでなく、勝手に姻戚関係を結ぼうなぞ。許せぬ事です」
「まあ、そう思うてくれて嬉しいが。姻戚関係になっても、悪い話ばかりではないのじゃ。美張を攻め落とそうと言う気は起こさなくなるのだからな。武田が一番危惧する存在であったから、これほど良き事はあるまい。
織田も美濃の斎藤と姻戚関係になったのだから、うちも武田と姻戚関係になって、結びつきを強めれば他とも充分に戦えるだろうしのぅ」
「ですが、それでは姫が」「姫様、お持ち致しました」
京の反論を遮る様に、総介が頼んだ物を持ってきた。そしてそれを淡々と、わらわの文机に並べる。
総介が帰ってきた事により、京は口をつぐみ、いつもの冷静な顔に戻った。だが、わらわを見据える瞳は強く何かを訴え、自分の願いを聞き入れて欲しいと言う風に見えた。
「京、続きを申してみるが良い」
わらわが遮られた先を言う様に促すが、文机の用意が終わり戻ってくる総介を軽く見てから、畳の網目に目を落とし「いえ、何も」と素っ気なく答えた。
「姫様。ご用意が出来ましたので、どうぞお使い下さい」
総介がわらわを文机の方に「どうぞ」と促す。
わらわは「あ、ああ」と後ろ髪を引かれる思いで移動し、文机で武田に宛てた文を書いた。
そして京はその間、何も言わなかった。書き終わり、京に「早急に武田の元に渡してくれるか」と頼んだ時も。
ただただ端的に「御意」と答えて、頼まれた事をきっちりとやるだけ。
わらわがもう一度、京に尋ねようとしたが。総介が柔和な笑顔で