人間も妖怪も、妖王の名と正体を口にするのを憚る事から、恐怖だけが伝わっているのだ。
そんな妖王と同等の力を持った妖怪が、この近くを彷徨いているとはのぅ。
わらわは小さく「恐ろしいものよの」と呟き、ううんと唸った。
「そんな妖怪が、まだこの日の本に居るとは。京はそいつを止められる事が出来るか?」
「それは・・どうでしょう。何とも言えませぬが、俺でも奴を食い止めるのには、厳しいかと」
京にしては珍しく、大仰な言い方をしているとも取れるが。顔つきで、雷獣に対しての評価を正当に下しているのだと分かる。
こうなってくると厄介だのぅ。京の言い分からするに、雷獣が参戦した時には、武田陣営も壊滅的な打撃を受けるのだろうが。わらわ達美張の陣営も無事では済まないであろう。ただでさえ、うちは少数。あっという間に全滅もあり得ぬ話ではない。
自然と顔が険しくなり、京達の前で腕を組み、深く考え出してしまう。
日本一を謳う、最強の武田の騎馬隊。それだけでも、頭を悩ませると言うのに。もう一つの最強を相手取るとは。これを最悪と言わずして、何と言おうか。
「ですが、姫。そこまで雷獣に思慮する必要はないかと。奴は気まぐれですから、参戦してくると決まっている訳ではないので」
京が擁護を入れてくれるが、わらわは渋面を作ったまま答える。
「参戦してこないに超した事はないであろうが。参戦してくる場合も考えねば。
無策のまま散るのは、何としてでも避けたいものじゃ。入念な策を幾つ持っていても、足枷にはなるまい」
「そうですね、姫の仰る通りです。俺が甘かったです」
京が引き下がると、総介がすかさず「でも、姫様」と間に入る。
「京がいるのなら、大抵の妖怪が来ても問題ないではありませぬか?雷獣とも恐らく渡り合えるでしょうし。それに幸い、美張は妖怪達が恐れを成している国でもありますから。そこまで妖怪に考えを裂かなくても良いのでは?」
京の擁護を入れつつ、自分の考えを述べた総介。京の力を認めている言い分をしたが、その顔つきは苦々しくなっている。
本当にこやつらの仲は、よく分からぬもんだな。悪いのか、良いのか。微妙と言う位置づけなのか。
フッと総介と京の間柄を測るが、やはりわらわには分からなかった。
そして無言のままではいられないので、顎に手を軽く当てながら「そうじゃの」と曖昧に答える。
そんな妖王と同等の力を持った妖怪が、この近くを彷徨いているとはのぅ。
わらわは小さく「恐ろしいものよの」と呟き、ううんと唸った。
「そんな妖怪が、まだこの日の本に居るとは。京はそいつを止められる事が出来るか?」
「それは・・どうでしょう。何とも言えませぬが、俺でも奴を食い止めるのには、厳しいかと」
京にしては珍しく、大仰な言い方をしているとも取れるが。顔つきで、雷獣に対しての評価を正当に下しているのだと分かる。
こうなってくると厄介だのぅ。京の言い分からするに、雷獣が参戦した時には、武田陣営も壊滅的な打撃を受けるのだろうが。わらわ達美張の陣営も無事では済まないであろう。ただでさえ、うちは少数。あっという間に全滅もあり得ぬ話ではない。
自然と顔が険しくなり、京達の前で腕を組み、深く考え出してしまう。
日本一を謳う、最強の武田の騎馬隊。それだけでも、頭を悩ませると言うのに。もう一つの最強を相手取るとは。これを最悪と言わずして、何と言おうか。
「ですが、姫。そこまで雷獣に思慮する必要はないかと。奴は気まぐれですから、参戦してくると決まっている訳ではないので」
京が擁護を入れてくれるが、わらわは渋面を作ったまま答える。
「参戦してこないに超した事はないであろうが。参戦してくる場合も考えねば。
無策のまま散るのは、何としてでも避けたいものじゃ。入念な策を幾つ持っていても、足枷にはなるまい」
「そうですね、姫の仰る通りです。俺が甘かったです」
京が引き下がると、総介がすかさず「でも、姫様」と間に入る。
「京がいるのなら、大抵の妖怪が来ても問題ないではありませぬか?雷獣とも恐らく渡り合えるでしょうし。それに幸い、美張は妖怪達が恐れを成している国でもありますから。そこまで妖怪に考えを裂かなくても良いのでは?」
京の擁護を入れつつ、自分の考えを述べた総介。京の力を認めている言い分をしたが、その顔つきは苦々しくなっている。
本当にこやつらの仲は、よく分からぬもんだな。悪いのか、良いのか。微妙と言う位置づけなのか。
フッと総介と京の間柄を測るが、やはりわらわには分からなかった。
そして無言のままではいられないので、顎に手を軽く当てながら「そうじゃの」と曖昧に答える。