これはわらわの勘に過ぎぬ話であるが。妖怪共は、日の本を自分達の国として統一を図ろうとしている様な気がしてならぬ。まぁ、別妖怪と徒党を組むなど聞いた事がないから、わらわの気のせいなのであろう。
 まざまざと並んだ事実に渋面を作り、此度の戦に向けての策を練ろうとするが。良い案は思いつかず、何の気なしに「京はどうじゃ」と投げかけてみる。
「主は妖怪達の動向をどう見る?」
「そうですね・・・・」
 わらわの問いを真っ向から受け止め、真剣に考え始めた京。
 人差し指と親指で顎を挟むように、片手を当てながら、うーんと唸りながら考える。
「信濃でしたら鬼女の紅葉(もみじ)。武田に上杉をぶつける為に、越後に向かうのでしたら鎌鼬が出張ってくるでしょう。
 紅葉の方は、他と比べると好戦的では無いとは言え、兵力が多いです。雑兵が多く、その数を生かし、兵力で圧倒してきます。好戦的でない為、介入はしてこないと見ておりますが。万が一介入するとしたら、両陣営が弱っている頃かと。
 鎌鼬の方は、好戦的で血気盛んな連中の集まりです。ですから、開戦と同時に介入してくるでしょうね。けれど、率いる数はごく少数。敵味方斬ってしまう、諸刃の剣であるのが鎌鼬ですから」
「ふむぅ、成程な。鬼女の紅葉に、鎌鼬か。どちらも手強い相手だな」
 唸る様に答えると、すぐさま京が「いいえ」と口を挟んだ。
「鬼女の紅葉と鎌鼬のどちらかなら、我らは運が良い方です」
「と言うと、他にも介入してくる恐れのある妖怪がいると申すか?」
 わらわが静かに尋ねると、京は強張った表情のまま堅く頷いた。
「はい、雷獣です。一匹狼で彷徨い、遊軍の様に介入してくる妖怪です。あまりにも強大な力を持ち、人間は勿論ですが、妖怪陣営でさえも圧倒してしまう。故に、束でかかっても敵わないと称される程です。近頃では、妖王と同等なのではと言われているのを耳にした事もございます」
 わらわはその言葉に愕然としてしまった。
 妖王。全国の妖怪達の頂点に立ち、絶大な力を持った妖怪だとされるが。妖怪にしては珍しく、姿を見せず、表舞台に出てくる事が滅多にない。それだと言うのに、妖王の力は絶大でひれ伏さない妖怪はいない。
 そしてそれは人間も同じで、名ばかりしか知らないと言うのに恐れを抱いている。帝でさえも恐れ、それ故に妖王と言う地位を授けたとも聞く。