「もう、あまり時間は残されておらぬなぁ」
困った様に笑うが、総介の目からはどんどんと涙が溢れ、うっうっと苦しい嗚咽を漏らし始めた。
「総介、主とはわらわが生まれる頃からの仲じゃな。覚えておるか、共に過ごした幼き時を」
わらわの瞼の裏に、総介と共に過ごした幼少時期が思い出される。
わらわがお転婆だったから、総介をよく困らせたものだ。年上だと言うのに、いつもわらわに振り回されっぱなしじゃったなぁ。当時、柔和な笑みがいつもの総介の顔を崩す事が出来るのは、わらわだけじゃった。それが自慢げに思えた事もあるのぅ。
まざまざと蘇る記憶にフフッと笑みが零れると、総介はむせび泣きながら「勿論、覚えております。どうしたら忘れる事なぞ出来ましょうか」と答えた。
わらわがそうかと微笑むと、下や横から炎の熱をじわじわと感じ始める。パチパチと木々が燃える音も、間近に迫って来た。
「総介、主のおかげでわらわはわらわでいられた。主が側にいるだけで、わらわは何の肩書きにも飲まれず、自分を見失う事もなかった。いつだって、主がわらわの苦しみや悲しみを見抜いてくれたな。
わらわには勿体無き家臣であったぞ、総介。礼を言う、今までわらわの側で仕えてくれて。今までわらわを支えてくれて」
「勿体無きお言葉にございまする、親方様。拙者の方が、貴方様の様な方にお仕えでき、光栄にございました。どんな時も貴方様の側にいられて、拙者は大変幸せにございました。貴方様の側に居られた、それ以上の幸せはこの世にございませぬ」
総介のむせび泣く言葉に、わらわの目からも堪えていた涙が、静かにほろりと睫から零れ落ちる。
「わらわはここで死ぬが、主も共に逝く必要はないのじゃよ?」
「そんな事を仰らないで下さい、親方様・・いいえ、姫様。拙者も共に参らせて下さいませ」
「フフフ、分かった。最期までかたじけないのぅ、総介」
わらわはニッコリと微笑み、カチャカチャと纏っている甲冑を手慣れた手つきで外し始めた。それに続く様に、総介も同じようにして甲冑を外し始める。
そして父上が、わらわの為にと作らせた懐刀をゆっくりと引き抜いた。
「うてじとも 燃ゆる刀は 残されし 我滅びゆく 刀なれども」
困った様に笑うが、総介の目からはどんどんと涙が溢れ、うっうっと苦しい嗚咽を漏らし始めた。
「総介、主とはわらわが生まれる頃からの仲じゃな。覚えておるか、共に過ごした幼き時を」
わらわの瞼の裏に、総介と共に過ごした幼少時期が思い出される。
わらわがお転婆だったから、総介をよく困らせたものだ。年上だと言うのに、いつもわらわに振り回されっぱなしじゃったなぁ。当時、柔和な笑みがいつもの総介の顔を崩す事が出来るのは、わらわだけじゃった。それが自慢げに思えた事もあるのぅ。
まざまざと蘇る記憶にフフッと笑みが零れると、総介はむせび泣きながら「勿論、覚えております。どうしたら忘れる事なぞ出来ましょうか」と答えた。
わらわがそうかと微笑むと、下や横から炎の熱をじわじわと感じ始める。パチパチと木々が燃える音も、間近に迫って来た。
「総介、主のおかげでわらわはわらわでいられた。主が側にいるだけで、わらわは何の肩書きにも飲まれず、自分を見失う事もなかった。いつだって、主がわらわの苦しみや悲しみを見抜いてくれたな。
わらわには勿体無き家臣であったぞ、総介。礼を言う、今までわらわの側で仕えてくれて。今までわらわを支えてくれて」
「勿体無きお言葉にございまする、親方様。拙者の方が、貴方様の様な方にお仕えでき、光栄にございました。どんな時も貴方様の側にいられて、拙者は大変幸せにございました。貴方様の側に居られた、それ以上の幸せはこの世にございませぬ」
総介のむせび泣く言葉に、わらわの目からも堪えていた涙が、静かにほろりと睫から零れ落ちる。
「わらわはここで死ぬが、主も共に逝く必要はないのじゃよ?」
「そんな事を仰らないで下さい、親方様・・いいえ、姫様。拙者も共に参らせて下さいませ」
「フフフ、分かった。最期までかたじけないのぅ、総介」
わらわはニッコリと微笑み、カチャカチャと纏っている甲冑を手慣れた手つきで外し始めた。それに続く様に、総介も同じようにして甲冑を外し始める。
そして父上が、わらわの為にと作らせた懐刀をゆっくりと引き抜いた。
「うてじとも 燃ゆる刀は 残されし 我滅びゆく 刀なれども」



