戦妖記~小国の戦姫~

 わらわは死者達を斬る片手間で、新手を相手取り立ち向かって行くが。敵方を斬り伏せていく度、こちらがどんどんと絶体絶命に追いやられていく。
 断崖絶壁の上で戦わされているだけでなく、わらわ達を崖の下に突き落とそうと、雪崩れる様に追い詰めてくる。
 最初の方こそ持ちこたえていたが、次々と美張の陣営の者達が崖の下に落ちていった。
 ギャッと言う小さな悲鳴をあげながら、あちこちで粘っていた家臣達が倒れていく音がする。
「親方様、このままでは持ちません!」「親方様ぁ!」「数が多すぎます!」
 あちこちで家臣達の悲鳴に近い絶叫が聞こえ、わらわはグッと奥歯を噛みしめながら、向かってきた死者を斬り倒した。
「皆、退け!城に入るのじゃ!」
 怒声を上げ、死者や新手を斬り捨てながら、城の中に退いていく。
 急いで中に引き上げ、城内に予め施しておいた阻塞で相手陣営を足止めする。死者だからか。施しておいた阻塞がかなり機能し、すぐに追いつかれる事もなく、難なく城の奥にと逃げ込めた。
 わらわは一室に集った家臣達をグルッと見渡すと、もともと三十と少なかった数が今では十三人と少なくなっていた。
 死者の返り討ちとなってしまったのがほとんどだろう。勿論、敵と妖怪そのどちらかにやられた家臣もいるであろう。無論ここに居る者だって、幾人も負傷兵としての位置づけになっている。外の京も呼び戻したいが、妖怪共に阻まれ、ここに来る事すら難しいだろう。
「京、戻って来い」
 呟く様に告げると、外の京がバッとこちらを向いた気がしたが。すぐに妖怪に取り囲まれ、あっという間に彼の姿が見えなくなった。
 京は戻って来られない。他の者も、皆戦える様な状態ではない。
 これで戦を続けようなんて無理だな。いや、初めから無茶な戦。負け戦だったのじゃ。幾ら京が戻って来たとしても、今川の後詰めもなく、こんな少数で戦おうなんて、ただの悪足掻きに過ぎなかったのじゃ。
 織田に敵討ちをと息巻いていたが、奴らにとっては足下で群れる蟻同然だったのであろう。
 いや、だがその蟻にここまで抗われているのは、賞賛に値すべきであろう。一時間以上をこの人数で粘りきっているのだから、これは奇跡に近い事ではないか。