後ろから聞こえた信じられない声に、絶叫が耳に入らなくなった。急いでバッと振り返ると、じわりと視界が歪む。
わらわに向かって額ずく姿。縦耳もぺたりと垂れ、長く白い髪が顔を隠す様に横に流れ、九本の尾もぺたんと床に張り付いている。
「京!」
わらわがバッと駆け寄ると、京は更に額を床に埋め込んだ。
「もう二度と顔を見たくないでしょうが。こうして戻って来た事をお許し下さい。しかし」
「もう良い、面を上げよ!」
京の言葉を遮り、深く下がった頭を上げさせる。だが、一向に顔が上がらず「しかし、姫にとって俺は」と言葉を弱々しく続かせた。
なので、わらわは憤然として京の肩を掴み、ぐいっと上げさせる。
強制的に上がった京の顔は驚きの色を見せていたが、傷だらけだった。口の端は切れて血を流し、目も腫れて、端正な顔は痛々しいものだった。
その傷に唖然とし、「どうしたのじゃ、その傷」と呟く様に尋ねると、「何でもありませぬ」と頑なに告げてから、顔を俯けた。
「戻って来た事、こうして顔を合わせてしまった事。姫にとって、大変苦痛であると思いますが」
「いや、そんな事はない」
もごもごと続ける京の言葉を遮って、しっかりと告げると。京の体がピクッと小さく震え、俯いていた顔がゆっくりと上がった。
わらわはその瞬間に、どんっと京の胸に衝撃を与える様に、京を強く抱きしめる。
「すまなかった、京」
「え、姫。何を」
唖然とした京の言葉が耳元で聞こえ、離れようと動こうとするが。わらわはそれを封じる様に、そして今までの思いをぶつける様に強く抱きしめた。
京の体が益々強張っていく様に感じるが、わらわは構わずに、強く京の顔を自分の肩に押しつける。
「すまなかった、今更謝っても許されぬ事であろうが。謝辞を述べさせて欲しいのじゃ。すまなかった」
じわりと視界を滲ませながら、京の耳元で告げる。「そ、それは」と言葉を発そうとしたので、わらわは言葉をすぐに続けた。
「主として失格じゃ、お前の言い分も聞きもせず、喚き散らした。あまつさえ刀を向けた。あってはならぬ事を、言ってはいけぬ事を言った。わらわはげにうつけで、愚か者じゃ。
あの時、皆を助けようとしていたのであろう?だから主の手は血塗れだったのじゃな。あんな惨憺な事を京がするはずがないと、分かっていたはずなのに」
わらわに向かって額ずく姿。縦耳もぺたりと垂れ、長く白い髪が顔を隠す様に横に流れ、九本の尾もぺたんと床に張り付いている。
「京!」
わらわがバッと駆け寄ると、京は更に額を床に埋め込んだ。
「もう二度と顔を見たくないでしょうが。こうして戻って来た事をお許し下さい。しかし」
「もう良い、面を上げよ!」
京の言葉を遮り、深く下がった頭を上げさせる。だが、一向に顔が上がらず「しかし、姫にとって俺は」と言葉を弱々しく続かせた。
なので、わらわは憤然として京の肩を掴み、ぐいっと上げさせる。
強制的に上がった京の顔は驚きの色を見せていたが、傷だらけだった。口の端は切れて血を流し、目も腫れて、端正な顔は痛々しいものだった。
その傷に唖然とし、「どうしたのじゃ、その傷」と呟く様に尋ねると、「何でもありませぬ」と頑なに告げてから、顔を俯けた。
「戻って来た事、こうして顔を合わせてしまった事。姫にとって、大変苦痛であると思いますが」
「いや、そんな事はない」
もごもごと続ける京の言葉を遮って、しっかりと告げると。京の体がピクッと小さく震え、俯いていた顔がゆっくりと上がった。
わらわはその瞬間に、どんっと京の胸に衝撃を与える様に、京を強く抱きしめる。
「すまなかった、京」
「え、姫。何を」
唖然とした京の言葉が耳元で聞こえ、離れようと動こうとするが。わらわはそれを封じる様に、そして今までの思いをぶつける様に強く抱きしめた。
京の体が益々強張っていく様に感じるが、わらわは構わずに、強く京の顔を自分の肩に押しつける。
「すまなかった、今更謝っても許されぬ事であろうが。謝辞を述べさせて欲しいのじゃ。すまなかった」
じわりと視界を滲ませながら、京の耳元で告げる。「そ、それは」と言葉を発そうとしたので、わらわは言葉をすぐに続けた。
「主として失格じゃ、お前の言い分も聞きもせず、喚き散らした。あまつさえ刀を向けた。あってはならぬ事を、言ってはいけぬ事を言った。わらわはげにうつけで、愚か者じゃ。
あの時、皆を助けようとしていたのであろう?だから主の手は血塗れだったのじゃな。あんな惨憺な事を京がするはずがないと、分かっていたはずなのに」



