わらわは全ての声に答える様に、柔らかく微笑んで告げた。
「良いか、皆の者。主等が美張の人間であると言う事は変わらぬ。美張で生きたと言う事も変わらん。故に、他国に移ろうとも何事にも負けず、強く生きられるはずじゃ」
宥める様に告げてから、わらわは民の顔を見渡し、目に一人一人を焼き付かせた。
「美張の誇りを持って生きよ、主等が美張そのものであると言うのを忘れず生きよ。生きにくくとも、何があろうとも。長く、そして強く生きよ」
これからを思いながら、これからに鼓舞する様にきっぱりと告げると、狼狽や動揺は消えた。その代わりに、ううと嗚咽が漏れ始め、民達に悲しみが広がった。
だが、その悲しみを堪える様に、民達は涙ながらにここを出る準備を始めていく。
そしてわらわ達から支給される物を受け取ってから、最後に皆がわらわの元に駆け寄って来た。いつもの様に、囲いを作って。
「姫様、どうかご無事で」「きっと迎えに来て下さいまし」「私共は貴方様をお待ち申しておりますから」「ご武運を祈っております」「私は姫様のご無事だけを願い申しております」
手を握り、何度も何度も姫様ご無事でと伝える民達。別れが惜しいと言う現れで、わらわの元を離れようとしない。
わらわは民達の姿に胸を熱くさせながら「約束じゃ、また会おう」と一人一人に答えた。そうして民達は家臣達に促され、別れを惜しみながら美張の地を離れて行ったのだ。
民がいないと、こうも侘しい土地に変わるものなのだな。いや、それが国と言うものか。民が国を作るのだからな。
わらわは柵をギュッと握り、城下町を優しく包む太陽の光をしっかりと見据えていた。
「姫様」
後ろからわらわを呼ぶ声がし、ゆっくりと振り向くと、甲冑を身に纏った総介が膝をつき、わらわに頭を垂れていた。
「皆、支度が整ってございます」
「そうか」
わらわは静かに答えてから、もう一度太陽を見つめた。
美しい光を注ぐ太陽を見るのは、これが最後になるやもしれぬなぁ。
希望の光か、破滅を逝く者達への慰めの光か。どっちかのぉ。
フッと微笑を零してから、ゆるりと柵から手を離し、総介と共に部屋を後にした。
殿も危惧されていらっしゃる、尾張の将・織田信長と、いよいよ刃を交わす。
「良いか、皆の者。主等が美張の人間であると言う事は変わらぬ。美張で生きたと言う事も変わらん。故に、他国に移ろうとも何事にも負けず、強く生きられるはずじゃ」
宥める様に告げてから、わらわは民の顔を見渡し、目に一人一人を焼き付かせた。
「美張の誇りを持って生きよ、主等が美張そのものであると言うのを忘れず生きよ。生きにくくとも、何があろうとも。長く、そして強く生きよ」
これからを思いながら、これからに鼓舞する様にきっぱりと告げると、狼狽や動揺は消えた。その代わりに、ううと嗚咽が漏れ始め、民達に悲しみが広がった。
だが、その悲しみを堪える様に、民達は涙ながらにここを出る準備を始めていく。
そしてわらわ達から支給される物を受け取ってから、最後に皆がわらわの元に駆け寄って来た。いつもの様に、囲いを作って。
「姫様、どうかご無事で」「きっと迎えに来て下さいまし」「私共は貴方様をお待ち申しておりますから」「ご武運を祈っております」「私は姫様のご無事だけを願い申しております」
手を握り、何度も何度も姫様ご無事でと伝える民達。別れが惜しいと言う現れで、わらわの元を離れようとしない。
わらわは民達の姿に胸を熱くさせながら「約束じゃ、また会おう」と一人一人に答えた。そうして民達は家臣達に促され、別れを惜しみながら美張の地を離れて行ったのだ。
民がいないと、こうも侘しい土地に変わるものなのだな。いや、それが国と言うものか。民が国を作るのだからな。
わらわは柵をギュッと握り、城下町を優しく包む太陽の光をしっかりと見据えていた。
「姫様」
後ろからわらわを呼ぶ声がし、ゆっくりと振り向くと、甲冑を身に纏った総介が膝をつき、わらわに頭を垂れていた。
「皆、支度が整ってございます」
「そうか」
わらわは静かに答えてから、もう一度太陽を見つめた。
美しい光を注ぐ太陽を見るのは、これが最後になるやもしれぬなぁ。
希望の光か、破滅を逝く者達への慰めの光か。どっちかのぉ。
フッと微笑を零してから、ゆるりと柵から手を離し、総介と共に部屋を後にした。
殿も危惧されていらっしゃる、尾張の将・織田信長と、いよいよ刃を交わす。



