戦妖記~小国の戦姫~

 しかしそれでやられる程妖王も単純ではなく、尾を束ね、俺の体を退かそうと攻撃してきた。重たい一撃にふらりと位置がずれるが、その隙を見計らって、妖王はするりと抜け出し、俺に飛びかかる。
 俺はその一撃に構えていたので、逆に尾を振り、バシッと横殴りにする。だが、妖王は吹っ飛ばされずに、華麗に空中に飛び出した。勿論、それで逃がす程甘くはないので、俺も空に舞い上がり、戦いの舞台を空に移す。
 そして空で繰り広げられる、凄まじい取っ組み合い。周りの妖怪達は巻き添えを恐れ、逃げだして行った。破壊された宮城からもぞろぞろと我先にと、妖怪達は必死に走るが。そんな妖怪達なんか歯牙にもかけず、俺達はバチバチと鎬を削り合う。
 ぶわっと口から追撃型の炎を吐かれ、その炎に身を焼かれたり。全ての影を利用して鋭い刃を生成し、逃げる奴の体を貫き続ける。
 互いに、ただ相手を亡き者にしようと、残酷な術を駆使してまで争っていた。
 そしてようやく相手の呼吸を乱す事ができ、あの最強を謳っている妖王が肩で息をし始める。
 ここまで戦って、ようやく呼吸が乱れた程度とは。やはり強いな、妖王。それは認めざるを得ない。だが、それに臆して、退く訳にはいかない。最後まで押し切れ、全力を出し切れ。越えられない壁なぞない。勝ちを描き続けろ。俺は奴を殺して、姫の元に戻るんだ。
 俺が、ぐわっと牙を剥き出して、襲いかかろうとした瞬間だった。俺の目の前に、再び忌まわしい歪んだ空間が現れる。
 その空間はすぐに広がり、俺の目の前に織田信長を映した。厳めしい顔つき。目をぎらりと血走らせ、そこに野望を宿していると分かる。纏っている覇気も凄まじいもので、気だけでも伸せる相手が存在するだろう。そして膂力も充分にあり、纏っている甲冑が窮屈に体を収めているなと感じさせる程の体つき。勇猛な将だと一目で分かる。
 なぜ、今俺に織田を見せた?
 俺が怪訝に思った瞬間、その答えを織田自身が教えてくれた。
「これより美張に入る!皆、気を引き締めよ!妖怪共が居るとは言え、我らも攻撃を怠るでないぞ!」
 猛々しく叫ぶと、空間の外から響く様な「うおおお」という雄叫びが聞こえた。その声で、何百と言う大勢の人間が織田の後を付いていると、容易に推測できる。