戦妖記~小国の戦姫~

「拙者等の関係は、言葉では言い表せぬものにございます。しかしながらお互いの考えが分かり、行動が理解出来る。だからこそ信頼だけは確固としてあり、任し、任させてもらえると言う形にございましょうか」
 半ば恥ずかしげに半ばしかつめらしく話す総介。わらわはその言葉に「成程のぅ」と小さく呟いた。
「では、一つ問おう。京は今、何を考え、何をしているか分かるか?」
 少し意地の悪い質問だったが、総介はあっけらかんと「それは勿論」と答えた。
「姫様を悲しませた張本人を探しておる最中か、その者を仕留めに行っているか。そのどちらかにございますよ」
 きっぱりと強く言い切る口調に、「随分頑なに言うものじゃな」と、少し呆気にとられてしまう。
「姫様の手前ですので、大人しく引き下がる事がほとんど。故に姫様はご覧になった事も、そう感じた事もございませぬでしょうが。アレはとんでもなく凶暴であり、その力は凄まじい。誰かに怒髪天を衝けば、その者が無事であった事なぞありませぬ。姫様しか止める事が出来る者もいない」
 わらわは淡々と告げられる真実に、冷徹で飄々とした性格の京がまことにそんな事をするであろうか?と首を捻るが。
 それを見計らって、総介が「覚えておられませぬか?姫様が七つの頃、野犬に襲われた時の事を」とクスッと笑みを零す。
「勿論覚えておるぞ。恐ろしい記憶だから、よく刻まれている。狩りをしていた所出くわし、すぐに京と総介が助けてくれたな」
「ええ。しかし姫様はその後を知らぬでしょう?」
「その後?」
 わらわはうーんとその時の記憶を思い出すが、二人に救われ、城に戻り、恐怖で母上と共に過ごした一日であった。何もその後は変わった事もなかったはずじゃが・・。
「あの時。姫様を大人の家臣に任せ、拙者等が殿を務めましたね」
 うーんと記憶を引っ張り出しながら「そうであった気もするなぁ」と答えると。
「姫様が居なくなった瞬間。京が姫様に危害を加えたばかりか、恐ろしい思いを植え付け許せぬと怒り狂い、その野犬達を一瞬で皆殺しにしたのですよ」
「えっ?!そうであったのか?!」
 初めて聞く話に、わらわは愕然とする。総介はその反応にコクリと頷いてから「京の恐ろしい所はそれからです」と答える。