「拙者の言葉は慰めや方便だと、お疑いになられるやもしれませぬが」
訴え続ける総介の言葉をわらわは「いや」と遮り、フッと口元を綻ばせた。
「それ以上の言葉はいらぬよ、総介。主の言葉まで疑る様にまでなったら、それこそ仕舞いじゃわ」
指先で目元を拭ってから、わらわはしっかりと総介を見据えた。
「すまぬな、総介。主のおかげで、纏わり付いていた闇が消えたばかりか。粉々に砕けた心が戻って行った。主がいなかったら、わらわは気がつかねばならぬ事にも気がつかず、ただ悲しい怒りに囚われ、ぶつける相手を間違え続けていたであろう。大切な者の一人を深く傷つけたままにしておったであろう。だが、そうはならなかった。主のおかげじゃな」
わらわがフフッと喜色を浮かべながら告げると、総介の顔にも明るい笑顔が広がる。
「全く、主君として情けないばかりよ。主には、幼き時からいつも救われてばかりじゃ」
「いえ、姫様。姫様を支え、お仕えするのが側仕えにございまする。拙者はその任を全うしているだけの事。謝る必要も、礼を述べる必要もございませぬ」
わらわはその言葉に、くしゃりと眉を寄せて小さく笑った。
「総介」
「ハッ」
歯切れの良い返事を聞いてから、わらわは腕を袖の中で組ませて、薄明時の空を見つめる。
「主の言う通り、ここで待つとしよう。京を。そして京が戻って来たら、沢山詫びを入れねばならぬな」
「姫様が頭を下げる必要はないかと。姫様に対し、誤解を生ませた方が悪うございます」
冷ややかな笑みを浮かべながら、京への皮肉を口にする総介に、わらわはフッと微笑を零す。
「相手を庇ったかと思えば、手の平をすぐに返し、主君の前にも関わらず不仲を見せ始める。げに掴めぬ、主等の関係性は」
肩を竦めながら言うと、総介は「そうですねぇ」と間延びした声で答えた。
「もはや仲が良い悪いで収まる関係ではないのでしょう。なんと申しますか、理解出来ぬが理解出来る関係・・とでも申しましょうか」
困惑した笑みで答える総介に、わらわは「なんじゃそれは」と苦笑を浮かべるが。総介はニコリと小さな笑みを零してから「拙者が不知である事も一因にございましょうが」と、言葉を紡ぐ。
訴え続ける総介の言葉をわらわは「いや」と遮り、フッと口元を綻ばせた。
「それ以上の言葉はいらぬよ、総介。主の言葉まで疑る様にまでなったら、それこそ仕舞いじゃわ」
指先で目元を拭ってから、わらわはしっかりと総介を見据えた。
「すまぬな、総介。主のおかげで、纏わり付いていた闇が消えたばかりか。粉々に砕けた心が戻って行った。主がいなかったら、わらわは気がつかねばならぬ事にも気がつかず、ただ悲しい怒りに囚われ、ぶつける相手を間違え続けていたであろう。大切な者の一人を深く傷つけたままにしておったであろう。だが、そうはならなかった。主のおかげじゃな」
わらわがフフッと喜色を浮かべながら告げると、総介の顔にも明るい笑顔が広がる。
「全く、主君として情けないばかりよ。主には、幼き時からいつも救われてばかりじゃ」
「いえ、姫様。姫様を支え、お仕えするのが側仕えにございまする。拙者はその任を全うしているだけの事。謝る必要も、礼を述べる必要もございませぬ」
わらわはその言葉に、くしゃりと眉を寄せて小さく笑った。
「総介」
「ハッ」
歯切れの良い返事を聞いてから、わらわは腕を袖の中で組ませて、薄明時の空を見つめる。
「主の言う通り、ここで待つとしよう。京を。そして京が戻って来たら、沢山詫びを入れねばならぬな」
「姫様が頭を下げる必要はないかと。姫様に対し、誤解を生ませた方が悪うございます」
冷ややかな笑みを浮かべながら、京への皮肉を口にする総介に、わらわはフッと微笑を零す。
「相手を庇ったかと思えば、手の平をすぐに返し、主君の前にも関わらず不仲を見せ始める。げに掴めぬ、主等の関係性は」
肩を竦めながら言うと、総介は「そうですねぇ」と間延びした声で答えた。
「もはや仲が良い悪いで収まる関係ではないのでしょう。なんと申しますか、理解出来ぬが理解出来る関係・・とでも申しましょうか」
困惑した笑みで答える総介に、わらわは「なんじゃそれは」と苦笑を浮かべるが。総介はニコリと小さな笑みを零してから「拙者が不知である事も一因にございましょうが」と、言葉を紡ぐ。



