大体皆殺しにしたなら、すぐに逃げ出せば良いものですが。奴は、姫様と相対しておりました。そこで何故、姫様が駆けつけるまで居たのかと言う疑問が生まれまする。さあらず、竹福丸を残し、眠らせたと言うのもあまり意味が無い。自分で姫様と相対し、そこで白状すれば良き話ですから」
トントンと詰められる言葉に、わらわは「確かに」と首肯する。
「そして最大の矛盾は、京が人間に対してその様な事をするかと言う点にございまする」
「と言うと?」
わらわが小さく尋ねると、総介はキリッと真剣な目つきに代わり「よく思い出して下さいませ」と告げた。
「京は人間に対して、妖術や自分の爪を使わぬ奴です。戦でも、人間相手ですと腰に差している刀を使っていたでしょう?」
淡々と告げられる答えに、わらわは冷や水を浴びせられた様にハッと目が覚める。
あまりの悲しみで忘れていた、当たり前の事実。
そうじゃ、京は人間の振りをした妖怪だから。戦でも人相手には刀を使っていた。京が妖術を使う時は、妖怪相手だけじゃった。
段々と涙の勢いも弱まり、ストンストンと乱雑な思考が一斉に整頓され、冷静が取り戻されていく。
そして頭が理性を取り戻すと、「京が本当にやったのか」と言う疑念が湧き始める。惨憺な現場と竹福丸の言葉を思い浮かべ、生まれた疑念と当てはめた。
竹福丸が聞いた「明後日、織田軍が攻め入る。宣戦布告じゃ」と言う、言い方も京の話し方ではない。
父上と母上も慕っている京が、父上からの問いかけに無視をすると言う事も考えられぬではないか。
あの時「数分前に着いたばかり」と言っていた、助けに駆け回っていたとも言っていた。よく思い返せば、京の衣や手に付いていた血も乾ききっておったではないか。それならば今着いて、助けに回っていたと言う事も頷けるのでは・・・。
「この惨状を引き起こしたのは、京・・ではなく・・・別の誰か」
ポツリと呟くと、総介が堅く頷いた。
「拙者も姫様の考えと同じく。京は無辜であり、これは姫様と京を貶めたい妖怪の仕業、なのではと思いまする」
総介の言葉ががつんと頭を強く殴り、鈍痛を脳内に響かせる。
そして強く思い知らされる。わらわが京に刀を向けたのは間違いであった、と。
トントンと詰められる言葉に、わらわは「確かに」と首肯する。
「そして最大の矛盾は、京が人間に対してその様な事をするかと言う点にございまする」
「と言うと?」
わらわが小さく尋ねると、総介はキリッと真剣な目つきに代わり「よく思い出して下さいませ」と告げた。
「京は人間に対して、妖術や自分の爪を使わぬ奴です。戦でも、人間相手ですと腰に差している刀を使っていたでしょう?」
淡々と告げられる答えに、わらわは冷や水を浴びせられた様にハッと目が覚める。
あまりの悲しみで忘れていた、当たり前の事実。
そうじゃ、京は人間の振りをした妖怪だから。戦でも人相手には刀を使っていた。京が妖術を使う時は、妖怪相手だけじゃった。
段々と涙の勢いも弱まり、ストンストンと乱雑な思考が一斉に整頓され、冷静が取り戻されていく。
そして頭が理性を取り戻すと、「京が本当にやったのか」と言う疑念が湧き始める。惨憺な現場と竹福丸の言葉を思い浮かべ、生まれた疑念と当てはめた。
竹福丸が聞いた「明後日、織田軍が攻め入る。宣戦布告じゃ」と言う、言い方も京の話し方ではない。
父上と母上も慕っている京が、父上からの問いかけに無視をすると言う事も考えられぬではないか。
あの時「数分前に着いたばかり」と言っていた、助けに駆け回っていたとも言っていた。よく思い返せば、京の衣や手に付いていた血も乾ききっておったではないか。それならば今着いて、助けに回っていたと言う事も頷けるのでは・・・。
「この惨状を引き起こしたのは、京・・ではなく・・・別の誰か」
ポツリと呟くと、総介が堅く頷いた。
「拙者も姫様の考えと同じく。京は無辜であり、これは姫様と京を貶めたい妖怪の仕業、なのではと思いまする」
総介の言葉ががつんと頭を強く殴り、鈍痛を脳内に響かせる。
そして強く思い知らされる。わらわが京に刀を向けたのは間違いであった、と。



