わらわは溢れる涙を拭いながら、総介の方にゆっくりと歩み、ぽすんと総介の胸板に頭をもたせかけた。その厚い胸板にしっかりと支えられると、ポタポタと涙が雨の様になり、地面に斑模様を作った。そしてこみ上げる、押さえ込んでいた思いが。
「父上、母上・・・。なぜお二人で逝かれてしまわれたのですか。先に逝かないで下さいまし。まだ千和の側に居て欲しかった。お二人に会いたい、嫌です。置いていかないで、父上、母上。まだ行かないでくださいませ。千和は辛く悲しゅうございます、父上、母上」
思ったままの事を乱雑に吐き出し、涙と共にぐちゃぐちゃな感情が溢れる。
するとぽんと、総介の手が優しく頭に乗った。父上や母上が、よくわらわを宥める時にしていた様に。
その手で更に涙と感情が弾けた。ああああと絶叫に近い様な声で泣き叫び、強く胸元の衣を握りながら、頭を更に厚い胸板に押しつける。
「どうして、京が!皆を殺してしまったのじゃ!わらわは信じておったのに!わらわの大切な家臣だと信じておったのに!わらわが不甲斐なかったせいか、そのせいで皆が死んでしまったのか。わらわのせいでっ!」
父上と母上、皆を亡くした悲しみから、徐々に京への悲しみと怒りに変わっていく。不甲斐ない怒りが涙に混じり、目頭がもっと熱くなる。
そう。わらわのせいで、皆が死んだのだ。
あの時、わらわが京を拾った時から間違っていたのだろうか。
京の「一生側仕えでいる」と言う言葉は嘘だったのか。交わした言葉の全てが、嘘であったのか。わらわは京を何も知っていなかったのじゃな、分かっていなかったのじゃな。何一つ、京を見ていなかったのじゃな。
それだから、こんな悲劇が生まれたのじゃ。全て、わらわの選択が間違っていたのじゃ。
胸の中で自分を責め立てていると、「いいえ」と上から強く宥める声が降ってきた。
「姫様のせいではございませぬ。どうか、お怒りを鎮め、冷静におなりくださいませ。姫様、拙者も竹福丸と同じ。腑に落ちぬ事がございます」
柔らかくもしっかりと諫める言葉に、わらわは「腑に落ちぬ事じゃと?」としゃくり上げながら尋ねる。
「はい、故に拙者はどうにも京が皆殺しにしたとは思えませぬ」
しっかりと告げる言葉に、わらわは少し唖然とした。
「お前が・・・京の肩を持つとは」
「父上、母上・・・。なぜお二人で逝かれてしまわれたのですか。先に逝かないで下さいまし。まだ千和の側に居て欲しかった。お二人に会いたい、嫌です。置いていかないで、父上、母上。まだ行かないでくださいませ。千和は辛く悲しゅうございます、父上、母上」
思ったままの事を乱雑に吐き出し、涙と共にぐちゃぐちゃな感情が溢れる。
するとぽんと、総介の手が優しく頭に乗った。父上や母上が、よくわらわを宥める時にしていた様に。
その手で更に涙と感情が弾けた。ああああと絶叫に近い様な声で泣き叫び、強く胸元の衣を握りながら、頭を更に厚い胸板に押しつける。
「どうして、京が!皆を殺してしまったのじゃ!わらわは信じておったのに!わらわの大切な家臣だと信じておったのに!わらわが不甲斐なかったせいか、そのせいで皆が死んでしまったのか。わらわのせいでっ!」
父上と母上、皆を亡くした悲しみから、徐々に京への悲しみと怒りに変わっていく。不甲斐ない怒りが涙に混じり、目頭がもっと熱くなる。
そう。わらわのせいで、皆が死んだのだ。
あの時、わらわが京を拾った時から間違っていたのだろうか。
京の「一生側仕えでいる」と言う言葉は嘘だったのか。交わした言葉の全てが、嘘であったのか。わらわは京を何も知っていなかったのじゃな、分かっていなかったのじゃな。何一つ、京を見ていなかったのじゃな。
それだから、こんな悲劇が生まれたのじゃ。全て、わらわの選択が間違っていたのじゃ。
胸の中で自分を責め立てていると、「いいえ」と上から強く宥める声が降ってきた。
「姫様のせいではございませぬ。どうか、お怒りを鎮め、冷静におなりくださいませ。姫様、拙者も竹福丸と同じ。腑に落ちぬ事がございます」
柔らかくもしっかりと諫める言葉に、わらわは「腑に落ちぬ事じゃと?」としゃくり上げながら尋ねる。
「はい、故に拙者はどうにも京が皆殺しにしたとは思えませぬ」
しっかりと告げる言葉に、わらわは少し唖然とした。
「お前が・・・京の肩を持つとは」



