母上、わらわは貴方様の思い描く娘ではありませんでしたね。嫋やかで、楚々とされておられる母上に対し、こんなじゃじゃ馬娘で恥を覚えた事もございましょう。かような者が娘でお恥ずかしい思いをさせてしまい、本当に申し訳も立ちませぬ。
お二人とも死に逝くと言うのに、そんな時に側にいる事が叶わなかったばかりか。駆けつけたのが遅くなり、大変申し訳ありませぬ。
こんな親不孝者で、申し訳ありませぬ。愛するお二人を救えず、愛するお二人の心に反する事ばかりをし続けた、愚か者です。
わらわは間に合わなかった、お二人の死に際に。わらわのせいで、お二人が亡くなられた。
完璧なお二人の娘として、忸怩たる思いばかりにございます。言葉では言い足りぬ程、わらわはお二人に謝りとうございます。
こんな娘だったばかりに、お二人が・・・。
ぽろっと堪えきれなかった涙が、一滴、目の端から滑り落ち頬をつたった。
その時だった。ぽんと頭に忘れる事なぞ出来ない大きな手が乗る。大きく、ごつごつとした手。マメを幾つも作り堅くなった手。安心させてくれる、わらわの好きな手。
「千和よ、主はワシのかけがえのない宝よ。自信を持て、胸を張れ。何を謝る事があるか、主はワシにとって勿体無き娘であったわ。こんなにも素晴らしい娘を持てて、ワシは幸せだったぞ。安心して美張を任せられる。母と共に、お前を見守っているぞ」
温かく、心地の良い低音の優しい声。ぶわっと涙が溢れそうになり、手が震えた。
するとわらわの肩にソッと柔らかく、小さな手が乗った。
「私の愛しい姫、謝る事もありませぬよ。父上様の仰る通り、胸を張りなさい。私は貴方が娘で良かった、恥じ入った時なぞありませぬ。貴方は、私の素晴らしい娘。
別れは口惜しく、辛いものですが。ずっと、貴方を見守っていますからね。だから安心なさいませ。貴方の心に父も母も、いつもおりますからね。生きなさいね、私の愛しの姫」
母上の優しい声が耳元でハッキリと聞こえ、くうと強く噛みしめた歯の隙間から嗚咽が漏れる。
「はい・・・はい・・・。父上、母上。わらわもお二人が両親で、大変幸せにございました。再びお会いする時に恥じ入る事がないよう、胸を張れる様わらわは生きて、美張を守ってみせまする。必ずや、守ってみせまする」
お二人とも死に逝くと言うのに、そんな時に側にいる事が叶わなかったばかりか。駆けつけたのが遅くなり、大変申し訳ありませぬ。
こんな親不孝者で、申し訳ありませぬ。愛するお二人を救えず、愛するお二人の心に反する事ばかりをし続けた、愚か者です。
わらわは間に合わなかった、お二人の死に際に。わらわのせいで、お二人が亡くなられた。
完璧なお二人の娘として、忸怩たる思いばかりにございます。言葉では言い足りぬ程、わらわはお二人に謝りとうございます。
こんな娘だったばかりに、お二人が・・・。
ぽろっと堪えきれなかった涙が、一滴、目の端から滑り落ち頬をつたった。
その時だった。ぽんと頭に忘れる事なぞ出来ない大きな手が乗る。大きく、ごつごつとした手。マメを幾つも作り堅くなった手。安心させてくれる、わらわの好きな手。
「千和よ、主はワシのかけがえのない宝よ。自信を持て、胸を張れ。何を謝る事があるか、主はワシにとって勿体無き娘であったわ。こんなにも素晴らしい娘を持てて、ワシは幸せだったぞ。安心して美張を任せられる。母と共に、お前を見守っているぞ」
温かく、心地の良い低音の優しい声。ぶわっと涙が溢れそうになり、手が震えた。
するとわらわの肩にソッと柔らかく、小さな手が乗った。
「私の愛しい姫、謝る事もありませぬよ。父上様の仰る通り、胸を張りなさい。私は貴方が娘で良かった、恥じ入った時なぞありませぬ。貴方は、私の素晴らしい娘。
別れは口惜しく、辛いものですが。ずっと、貴方を見守っていますからね。だから安心なさいませ。貴方の心に父も母も、いつもおりますからね。生きなさいね、私の愛しの姫」
母上の優しい声が耳元でハッキリと聞こえ、くうと強く噛みしめた歯の隙間から嗚咽が漏れる。
「はい・・・はい・・・。父上、母上。わらわもお二人が両親で、大変幸せにございました。再びお会いする時に恥じ入る事がないよう、胸を張れる様わらわは生きて、美張を守ってみせまする。必ずや、守ってみせまする」



