手からポタポタと断続的に血を流し、身に纏っている濃藍色の小袖に父上と母上、いや、この城で殺された者達の血をべっとりと付かせた京に向けて。
全ての怒りをぶつける。
「姫、ち、違うのです。これは」
歯切れ悪く言葉を紡がれるが、「言い逃れは出来ぬぞ!」と、涙をまき散らしながら、言葉の先を潰した。
「ここに居た者達の傷は、人間業ではない!肩から腰辺りまで綺麗に斜めを描く様に斬るだけにあらず、肉までも抉る様な深い傷を負わせる。これが人間の仕業かと思うか!
それだけではない、皆不意を突かれたように死んでいたのだ。生活感を残したまま倒れ、驚きの表情を浮かべたままの奴が多かった。逃げていた者もおらぬ。恐らく、皆一気に殺されたのじゃ。一気に殺されたか、顔見知りに殺されたに違いない」
煮えたぎる怒りを身に宿しながら言葉を淡々とぶつけていくと、目から涙が溢れ、目の前に居るはずの京がぼやける。いつもの姿に見える事はなく、自分の知らない姿になっている様に見え始めた。
そうだ、こやつはもうわらわの知っている京ではないのじゃ。
奥歯を噛みしめ「お前なら!」と声を張り上げる。
「こんな事を容易く行える、日本でも指折りの強さを持った妖怪じゃ!妖王に会いに行くと嘘をつき、わらわの居ない間を狙う事が出来る者でもある!お前は狐、人間を化かす妖怪じゃ!これがお前の本性で、わらわ達を欺いていたのであろう!」
子供が大声で泣き喚く様に声を荒げ、緋天を京に向けて振り下ろす。
すると京は「ち、違います」と苦しそうに告げながら、黒真珠の様な瞳でわらわをしっかりと貫いた。
「姫、俺は姫がお付きになる数分前にここに戻りました。その時には、すでに城内はこの有様で、俺は助けに回っていたのです。信じて下さい、姫」
「じゃあ誰がこんな残酷な事をしたと申すか!」
わらわが噛みつくと、京は苦しげな顔をして「誓って俺ではありませぬ」と、歯切れ悪く答えた。
しかし、その時だった。閻魔王からの知らせの様に、りぃんと遠くでりんが鳴った音がした。その音に眉をひそめると、「京殿、でした」と言う苦しげな声が聞こえた。
聞き馴染みのある声にハッとし、後ろを振り向くと。家老である、朝川太郎頼晴が襖に寄りかかる様に立っていた。
先程確認した時は動きもせず、死んでいると思ったが。死が誤認だったとは。
全ての怒りをぶつける。
「姫、ち、違うのです。これは」
歯切れ悪く言葉を紡がれるが、「言い逃れは出来ぬぞ!」と、涙をまき散らしながら、言葉の先を潰した。
「ここに居た者達の傷は、人間業ではない!肩から腰辺りまで綺麗に斜めを描く様に斬るだけにあらず、肉までも抉る様な深い傷を負わせる。これが人間の仕業かと思うか!
それだけではない、皆不意を突かれたように死んでいたのだ。生活感を残したまま倒れ、驚きの表情を浮かべたままの奴が多かった。逃げていた者もおらぬ。恐らく、皆一気に殺されたのじゃ。一気に殺されたか、顔見知りに殺されたに違いない」
煮えたぎる怒りを身に宿しながら言葉を淡々とぶつけていくと、目から涙が溢れ、目の前に居るはずの京がぼやける。いつもの姿に見える事はなく、自分の知らない姿になっている様に見え始めた。
そうだ、こやつはもうわらわの知っている京ではないのじゃ。
奥歯を噛みしめ「お前なら!」と声を張り上げる。
「こんな事を容易く行える、日本でも指折りの強さを持った妖怪じゃ!妖王に会いに行くと嘘をつき、わらわの居ない間を狙う事が出来る者でもある!お前は狐、人間を化かす妖怪じゃ!これがお前の本性で、わらわ達を欺いていたのであろう!」
子供が大声で泣き喚く様に声を荒げ、緋天を京に向けて振り下ろす。
すると京は「ち、違います」と苦しそうに告げながら、黒真珠の様な瞳でわらわをしっかりと貫いた。
「姫、俺は姫がお付きになる数分前にここに戻りました。その時には、すでに城内はこの有様で、俺は助けに回っていたのです。信じて下さい、姫」
「じゃあ誰がこんな残酷な事をしたと申すか!」
わらわが噛みつくと、京は苦しげな顔をして「誓って俺ではありませぬ」と、歯切れ悪く答えた。
しかし、その時だった。閻魔王からの知らせの様に、りぃんと遠くでりんが鳴った音がした。その音に眉をひそめると、「京殿、でした」と言う苦しげな声が聞こえた。
聞き馴染みのある声にハッとし、後ろを振り向くと。家老である、朝川太郎頼晴が襖に寄りかかる様に立っていた。
先程確認した時は動きもせず、死んでいると思ったが。死が誤認だったとは。



