こんなに綺麗に斜めを描く様に、人体の肉までもそぎ落とす様に斬るなぞ、出来るものか?人間業ではなかろう。となると、妖怪がやったのか?
傷を見て、さーっと冷静さが取り戻され、淡々と考え出した。
だが、「親方様方は」と後ろからポツリと呟かれた言葉で、取り戻された理性が消え、戦々恐々とし始める。
この者は死んでから、かなり時間が経っておる様に見える。そうなると、もう父上と母上も・・・?
い、いや。いや、まだ決めつける訳にはいかぬ。早々に諦めてはならん、弱気になるでない。き、きっとご無事じゃ。そうに決まっておる、決めつけるには早いであろう。
わらわはゆっくりと立ち上がり、「皆」と呟く。
「城内を確認する。ついて参れ」
ゆっくりと力強く告げると、少しの間を置いてから「ハッ」と従順な声が返ってきた。
わらわはその声を受けて、ゆっくりと一歩を踏み出してから、しっかりとした足取りで進み始めた。それにより強く鼻腔を刺激する、大量の血の匂い。
そして遂に城の中に足を踏み入れたが。城の中は、外の世界よりも凄惨であった。
男だけではなく、女房達も。皆、不自然な格好で倒れていた。朱殷色の血溜まりに伏して、そこから動きだそうとする者はいない。
残酷すぎる世界が目の前に広がり、これが悪夢だと現実から目を逸らしたくなるが。鼻腔に貫く血の匂いと、こちらを向いた者達がこれは現実だと、しっかりと思い知らせる。
わらわは唇を堅く噛みしめ、現実に向き合った。気持ちを押し殺すが、皆の顔と傷を見ると「あ」「う」と言葉にならない言葉が漏れてしまう。後ろに居る者達も、言葉にならない言葉を零し、現実に苦悶していた。
わらわ達は一人一人、生存しているかどうかを確認していきながら進むが。その度に、心は酷く抉られ、戦で負うよりも深い傷を負わされる。そして「確認するまでもない」と言う、虚しい思いが襲ってくる事も、かなりこたえた。
こんな死は、戦の死とは全く違う。こんな形の死は、皆無念であり、悔しい事であったろうに。
じわりと涙が生まれ、零れ落ちそうになるが。必死に涙を堰き止め、目の縁に堪らせる。悲しみと苦しみを紛らわせる様に痛みを作り出し、これでもかと言う程強く唇を噛みしめ、拳を作り、手の平の肉を抉る様に爪を突き立てた。
そして遂に、父上と母上がいらっしゃるであろう部屋の前に立った。
傷を見て、さーっと冷静さが取り戻され、淡々と考え出した。
だが、「親方様方は」と後ろからポツリと呟かれた言葉で、取り戻された理性が消え、戦々恐々とし始める。
この者は死んでから、かなり時間が経っておる様に見える。そうなると、もう父上と母上も・・・?
い、いや。いや、まだ決めつける訳にはいかぬ。早々に諦めてはならん、弱気になるでない。き、きっとご無事じゃ。そうに決まっておる、決めつけるには早いであろう。
わらわはゆっくりと立ち上がり、「皆」と呟く。
「城内を確認する。ついて参れ」
ゆっくりと力強く告げると、少しの間を置いてから「ハッ」と従順な声が返ってきた。
わらわはその声を受けて、ゆっくりと一歩を踏み出してから、しっかりとした足取りで進み始めた。それにより強く鼻腔を刺激する、大量の血の匂い。
そして遂に城の中に足を踏み入れたが。城の中は、外の世界よりも凄惨であった。
男だけではなく、女房達も。皆、不自然な格好で倒れていた。朱殷色の血溜まりに伏して、そこから動きだそうとする者はいない。
残酷すぎる世界が目の前に広がり、これが悪夢だと現実から目を逸らしたくなるが。鼻腔に貫く血の匂いと、こちらを向いた者達がこれは現実だと、しっかりと思い知らせる。
わらわは唇を堅く噛みしめ、現実に向き合った。気持ちを押し殺すが、皆の顔と傷を見ると「あ」「う」と言葉にならない言葉が漏れてしまう。後ろに居る者達も、言葉にならない言葉を零し、現実に苦悶していた。
わらわ達は一人一人、生存しているかどうかを確認していきながら進むが。その度に、心は酷く抉られ、戦で負うよりも深い傷を負わされる。そして「確認するまでもない」と言う、虚しい思いが襲ってくる事も、かなりこたえた。
こんな死は、戦の死とは全く違う。こんな形の死は、皆無念であり、悔しい事であったろうに。
じわりと涙が生まれ、零れ落ちそうになるが。必死に涙を堰き止め、目の縁に堪らせる。悲しみと苦しみを紛らわせる様に痛みを作り出し、これでもかと言う程強く唇を噛みしめ、拳を作り、手の平の肉を抉る様に爪を突き立てた。
そして遂に、父上と母上がいらっしゃるであろう部屋の前に立った。



