「団長!!」
「殿下!!」
「ご無事で良かったですわ~!!」
「皆、心配かけてすまなかった」
ラルフとマリナラがサザール砦へ戻ると、キール、ニキ、ハモンの三人は歓喜した。団長の帰還は直ぐレジランカ騎士団にも伝えられた。
歓喜の渦の中、ハモンがいち早く動く。
「早馬を用意しろ!!レジランカのエルバート殿下に至急お知らせせよ!!」
リンデルワーグ勢は俄然勢いづいた。先日は敗戦を余儀なくされたが、今ならは負ける気はしない。こうなると戦いたくてうずうずしてくる。
「さあて……マガンダはどう出ますかね?」
「……おそらく、それどころではないだろう」
「どういう意味ですか?」
キールの質問にはラルフの代わりにマリナラが答えた。
「クルスの本当の目的は、リンデルワーグではなくマガンダだったのです。ニキ様の部下の方々に頼んで調べて頂きました。閉鎖されているはずの坑道の中には無数の足跡があったと。クルス兵のものと見て間違いないでしょう」
マリナラの考察にラルフは深く頷いた。
「マガンダ国境を越えたクルス兵のうち三分の二以上が山向こうの交易都市に向かったはずだ。屋敷から逃げる途中で煙が上がっているのを見た」
ケイネスの足元はいつも黒く汚れていた。頻繁に坑道を行き来していた証左である。
「なんですか、つまり……我々はマガンダを国境に引きつけておくための囮にされたというわけですか?」
「ああそうだ」
マガンダでも屈指の交易都市には常備兵がいたはずだが、此度のリンデルワーグとの戦で接収され警備は手薄だったはずである。
そして、ダメ押しのようにラルフを人質にとりナイジェルからなけなしの冷静さを奪った。
仲間だと油断させておいて背後から襲い掛かる、その手際の良さには敵ながら拍手を送ってやりたい。
「さあ、撤退するマガンダ兵の背中を追い立ててやろう!!それも、うんときつくな!!」
「はい!!」
団長を取り戻し士気が上がるリンデルワーグ側に対し、ナイジェルという指揮官を失ったマガンダ軍の動きは精細を欠いた。
憂さを晴らすようにサザール平原で応戦すると、マガンダ軍は蜘蛛の子を散らすように国境まで逃げ帰って行った。
クルスにも牙を向かれ、マガンダは踏んだり蹴ったりである。
こうして、サザール平原の戦いはリンデルワーグの大勝利に終わったのであった。