広場には、数十人が集まっていた。
 村人たちはほとんどいるだろう。

 私の生みの両親――蓮池家の現当主とその奥方が、私たちを待ち構えていた。
 ずいぶん久しぶりに二人の顔を見たけれど……だいぶ老けたみたいだった。

 広場の中心に立つのは、私と紅とあや、まもり神さまと清。

 ほとんどの村人が私を忌まわしげに見ていたけれど、後ろのほうであやを心配そうに見ている一家だけは、私と目が合うと何度も頭を下げてきた。

 初めてお顔を見るけど、たぶん、あやの家族だ……。
 優しそうな雰囲気が、みんなあやと似ている。

 申し訳ない。謝っても謝り足りない。私のせいで、あやがこんな目に……。
 私は、あやの一家に深く頭を下げた。それくらいしか、今はできなかった。

 蓮池家の現当主は、腕組みをして尊大に言い出す。

「どういうことなんだ、清。生贄は空気の清浄な朝のうちに捧げたかった。おまえが生贄を連れてくると言うから、私たちは任せたのだが」
「私はうまくやったわよ! でもね父さま、忌み子は男を連れ込んでいたの。村人から昨晩通告を受けたのよ。忌み子の座敷牢から男と女の笑い声が聞こえてきたって。それでね、忌み子ったら、本当に男を連れ込んでいたの。だから生贄に捧げる前に厳罰に処しましょう? いっぱい苦しめて、殺しましょうよ!」
「まったくおまえは、いつも話したいことから話す……生贄というのは、生きたまま捧げるから意味があるのだ。私たちの手でそれを殺してしまうわけにはいかない」

 厳罰でも生贄でも、……なんでもいいのだけれど。
 どちらにせよ、私のことを相変わらずまったく何ひとつ大事になど思っていないのは――よく伝わってきた。

「……硯を生贄にしようとしていたのは、おまえたちか」
「なんだ、この男は――」
「忌み子と過ごしていた不届き者よ。さっきから、わけのわかんないことばっかり言ってるの――」
「この御方は大蛇の君だ!」

 まもり神さまが叫ぶ。

「……これはこれは、まもり神さま。まもり神さまは、この男とお知り合いなのですかな?」
「知り合い? とんでもない。このように強力な御方と知り合いと称するなど、あまりに畏れ多い。――みなこの御方にひざまずけい!」

 まもり神さまは、両手を上げる。
 村人たちは、ざわざわとし始めた。