しゃらん、しゃらん、しゃらん。
 鈴の音は……どんどん近づいてくる……。

 どくん、どくん、どくん。
 胸が、早鐘のように鳴る。

 紅さまは……蛇のすがたに戻れたかしら。
 清たちに、見つかってしまわないといいけれど。

 しゃらん、と音が止まった。
 小屋の鍵が開いて、清が――あらわれた。

 立派な着物を着て、立派な簪をつけた、私と血を分けたはずなのに似ても似つかない立場にいる、双子の妹。

 となりには、まもり神さまがいらっしゃる。今日も、おきれいだけど――私には冷たい視線を向けていた。
 そばには、おつきの村人たち。彼らは私を軽蔑した顔で見下ろしている。

 私と彼らを隔たるものは、格子一枚。

 私は、ほほえんで両手をつく。そして、そのまま頭を深く下げる。
 座敷牢の格子越し、腕を組んで私を見下ろしている清に対して。

「お早う御座います、清さま」
「……ふん。今朝も土下座が似合っているわね、硯」

 清の、侮蔑に満ちた声。
 私の視界には腐りかけた畳しか映っていない。
 許しが出るまで、顔を上げることはできないから。
 畳を睨みつけることくらいは――私のささやかな自由として、……抵抗として、許されるかな。

「顔を上げて?」

 清の声で、私は感謝を述べながら顔を上げる。
 座敷牢の格子越しに、清の顔があった。
 清は、きれいな着物を着ながら、作法を気にせずしゃがみ込んだのだ。

 きらびやかで。
 自由気ままで。
 いつもだれかに命令していて。
 この村はわがものとばかりに振る舞っていて。
 そして……まもり神さまに、愛されている……大事に思われていて、大事に扱われている……。

 ほんとうに、私とは真逆の運命……。