ひどい失恋をした女生徒。

両親が離婚をしたばかりの男子生徒。

内申が壊滅的な男子生徒。

本音を話せない男子生徒。


小生が経営するしがない塾には、
小生が受け入れを決めた生徒達が
、夕方からの勉学という大義の元で、学区の垣根を越えて日々集っていた。

義務教育という整備された学舎から一時離れた子供達は、志望校合格という名目を掲げながら、学校もしくは家庭、自己から逃避する場の1つに小生の塾を選ぶ。

そして自宅の一室に置く黒板の前で、居並ぶのは受験生という客人では無かった。

黒板から見える光景は、彼等生徒達が想像する以上に、己の内側をさらけ出している事を、本当に彼等は気付いておらず、小生は何度笑いが込み上げそうになった事か。

同時に、余りに溢れる内側であるに関わらず、その出口を無意識下で求めている葛藤の姿に感動を覚えた。

小生は青春の熱を、毎夜目の前にまざまざと浴びながら、教鞭を取るのだ。

彼等はどれ程気付いている、否、知らないままだろう。
彼等の熱を昇華させるに提示した、文章を書く作業には、如何なる熱が存在していたのかを。

昇華の中で、本音を云わぬ子供が
いかに饒舌になるのかを。

幾年月か彼等の群れを送り出した頃、小生は筋肉が萎縮する病となり、その第二のライフワークといえた経営を閉じる事となる。

小生が初起稿した此の青春日記は、送り出した彼等の手により一冊の書籍となり、彼等の元へ届けられる。

本来の生業と夢みた物書きには、未だに願い叶わずであるが、第二の人生を彩り、青い果実の如く季節を、再度味わせてくれた彼等へ。

彼等の申し出は、小生がこれまでに書き溜めた原稿を版にと願うに
変更をさせてもらう。

彼等のポケットの中に、永く残されたままになっていた感情は、彼等だけに返却すべきだ。

ただ最後に彼等の言葉を借りるならば、

君達に出会えて良かった。
あの時の思い出は大切な宝物だ。
幾つまでも元気で。

全員に深い感謝を。


そして原稿データに最後まで尽力をしてくれた、カラオケハウス 『ZOO』オーナー、ここでは彼の意向により、名前は伏せる。

有難とう。


此にて『忘れたまんまの君がポケットに入れいたのは青い日の恋かもしれないと先生は云った』