「そんなに大切なのか? おまえの願い事」
男の子が彩寧の目をジッと覗き込んでくる。男の子の青紫の瞳は綺麗だけれど、その双眸が彩寧心の中までを覗き込もうとしているようで、少し怖かった。
「大切だよ、すっごく大切。だからどうしても、神様にわたしのお願い事を聞いてもらわないと困るの」
「ふーん」
男の子が頷くと、チリンと鈴の鳴る音がする。
「だったら、おれからも神様に頼んでやろうか」
「え? もしかして、あなた、神様と知り合いなの?」
「まぁな」
「すごい!」
目を輝かせる彩寧を見て、男の子がふっと大人びた表情で笑う。
「ねえ。神様にお願いをきいてもらうには、どれくらいお金が必要? わたし、お財布にたくさん持ってきてるの」
彩寧は興奮気味にそう言うと、がま口の財布を開いてみせた。そこには、おもちゃ銀行のお札や硬貨がいっぱいに入っている。彩寧の全財産だった。
「そんなおもちゃ、必要ない」
「お金、いらないの?」
おばあちゃんが、お願い事をするときには《お賽銭》が必要なんだと言っていたのに。
彩寧が財布の中のプラスチックと厚紙のお金に視線を落とすと、男の子がバカにするように顔をしかめた。