どうすれば神様はお願い事を叶えてくれるのだろうか。
そう思っておばあちゃんに訊いたら、「境内をお掃除したり、手入れしてあげたら、神様も喜んでくださるかもねえ」と言うので、境内に置いてあった柄の歪んだ竹箒で掃除をしたり、おばあちゃんの家から持ってきた古布で苔の生えた狛犬の体を拭いてみたりした。
だけど彩寧の頑張りが足りないのか、お詣りを始めて二週間が過ぎても未だに願いは叶わない。
「神様、どうかお願いします」
今日も両手を合わせて一生懸命にお願いしていると、チリンと小さな鈴の鳴る音がして、彩寧の髪がふわりと風に揺れた。
「おまえ、近頃毎日ここに来てるな」
突然に話しかけられた彩寧は、ビクッとして目を開けた。両手を胸の前でくっつけたまま振り向いて、さらにびっくりする。
さっきまでたしかに誰もいなかったはずなのに。彩寧の隣に男の子が立っていたのだ。
年は彩寧と同じくらいのようだが、男の子は彩寧が見たこともないような変わった格好をしている。
彩寧が通う小学校の男の子たちはTシャツに細身のズボンを履いている子がほとんどなのに、隣に立っている男の子は濃い青の着物みたいな上着を着て、長いスカートのような、裾が大きく広がったズボンを履いているのだ。
よく見ると、足元は草履で、左足首に結んだ赤い紐には小さな金の鈴が付いている。
男の子の髪の毛はつやつやと光る銀色で、目は綺麗な青紫だった。