智颯の消えた空を呆然と見上げていると、風もないのに、わたしの左手首で金の鈴がチリンと鳴った。

 小さな鈴の音が、自分がここに連れて来られた意味を思い出させる。

 そうだ。ハルとヒロを探さないと。弟たちの顔を思い浮かべながら、わたしは寺の門をくぐり抜けた。

 泉心寺は家から一番近くにある寺だが、これまで一度もその敷地の中に足を踏み入れたことがない。

 小さな寺の境内はひっそりとしていて、ハルとヒロがいるようには見えなかった。

 智颯は清良様という神様がこの場所を示したと言っていたけれど……。読み誤ったのだろうか。

 念のため、門の正面に建てられた本堂の横に回り込んでみる。

 そのとき、本堂の脇に植えられた木の下に、小さな男の子がふたりして座り込んでいるのが見えた。

 悠臣と宏臣。そこにいるのは、弟たちで間違いない。

「ハル、ヒロ!」

 大声で名前を呼んで駆け寄ると、ヒロのほうがこちらを振り向いて無邪気に笑いかけてきた。

「あれ、イロちゃん。どうしたの?」

「どうしたの、じゃないよ。ふたりがいなくなったって、ママもお姉ちゃんも心配してたんだよ」

「えー、いなくなってなんかないよ。猫のお母さんと赤ちゃんがいてね、ハルと一緒にここで見てたの。そしたらハルが途中で寝ちゃったから、ここから動けなくなっちゃった」

 悪びれのない顔でそう説明するヒロ。その隣で、ハルがヒロの肩にもたれながら気持ち良さそうに昼寝している。