「もし弟たちがここにいなかったら、どうすればいいの?」

「大丈夫だ。必ず見つかる」

 智颯はそう言うと、袖をつかむわたしの手をそっと引き剥して地面に片膝をついた。

 自分の左足首に触れた智颯が、そこに結び付けてあった赤の紐を解く。それからおもむろに立ち上がると、わたしにそれを差し出してきた。

「これをおまえに預けておく」

 わたしの目の前で、赤い紐に付けられた小さな金の鈴が、チリンと透き通った音で鳴る。

「これは?」

「もしものときの御守りだ」

「御守り……」

 智颯が、細い三つ編み状になっている赤の紐をわたしの左手首に結ぶ。

「おまえの願いどおり、弟が見つかったらおれのところに返しに来い」

 少し目を細めた智颯が、ふっと笑う。その表情に胸を鳴らしながら、左手首の紐に反対の手で触れた。そのとき。

 わたしの周囲でザザーッと強い風が吹き荒れた。

 軽やかに地面を蹴った智颯が、宙に跳ぶ。目を凝らして見上げると、風の音にまぎれて智颯の低い声がした。

「今度は、彩寧が自分の意志でおれに会いに来い」

 綺麗な白銀の髪を靡かせながらそう言ったかと思うと、次の瞬間にはその姿を消してしまう。