「おれは神の使いだが、万能じゃない。だが、おまえが弟たちを探したいと願えば、それを叶える手伝いができる」

「願うって、神様に?」

 智颯がわたしを見つめて、すっと口角を引き上げる。

 神様に頼むだけで願いごとが叶うなんて。バカ正直にそれを信じるほど、わたしは、もう子どもじゃない。だけど、智颯には過去に願いを叶えてもらった前例がある。

「弟たちは、本当に見つかる?」

「願いを言えば力になってやる。おまえはおれの嫁になる女だからな」

 嫁になるなんて、わたしはまだ了承もしてないのに。少し偉そうで、自信たっぷりな智颯の笑顔に胸がさわいだ。

「あなたに力を貸してほしい。弟たちを見つけて」

「承知した」

 両手を握り合わせて頭を下げると、智颯の手がわたしの髪をするりと撫でた。

 髪に触れた智颯の手から不思議なあたたかさを感じる。顔を上げると、智颯の綺麗な青紫の瞳と目が合った。

「今から、弟たちのところまでおまえを案内する」

「え、もう見つけたの?」

「もともと、それほど遠くには行っていなかったらしい」

「遠くには行ってない、って……。ハルとヒロはどこなの?」

「今からおまえを連れて行く。その代わり、少しだけ気を分けてくれ。嫁になる契約を結んだ人間からは、強い力が得られる」

「気の、力……?」

 また訳のわからないことを言い出した智颯をぽかんと見つめると、彼がわたしの左手をとって口元に近付けた。