「これから、家から離れた公園まで探しに行ってみようと思うの。だから彩寧は、もしふたりが戻ってきたときのために、家で待っていてくれない?」

「わかった、すぐに帰るね。大丈夫、絶対見つかるよ」

 わたしは、泣きそうな声で話すママのことを励ましてから電話を切った。

「何かあったのか?」

 スマホを握りしめて、しばらく呆然としていると、智颯がわたしの顔を覗き込んできた。

 緊急事態なのに、近付いてきた智颯の眼差しに胸が鳴る。

「ごめんなさい。わたし、行かないと。弟たちがいなくなったみたい」

 智颯とは話の途中だけど、今はいなくなってしまったハルとヒロを探すほうが大事だ。

 ろくに挨拶もせずに走り去ろうとすると、ゆっくりと追ってきた智颯がわたしの腕をつかむ。

「待て、彩寧」

「わたしの言ったこと、ちゃんと聞いてた? 弟たちがいなくなったの。だから、あなたとの話はまた今度」

 元々訳のわからない話だったし、これきりになってもいいかもしれない。

 智颯の手を振り切ろうとすると、彼がわたしの腕をつかむ指に力を入れた。

「だから、待て。そんなに焦って震えていては、見つかるものも見つからない」

 智颯に指摘されるまで気が付かなかったが、わたしの手はたしかに、焦りに震えていた。ママには「大丈夫」と励ましたくせに、本当はわたしも不安なのだ。