「もしもし、ママ?」
「彩寧? 今どこなの?」
通話ボタンを押すと、ママが怒ったように早口で話してきたからびっくりした。やっぱりママは、わたしがおつかいから帰ってくるのが遅いから、電話をかけてきたらしい。
「え、っと……、ごめんなさい。まだおつかいの途中」
「そう。できるだけ早く帰ってきて」
「うん、買い物はこれからだから、終わったらすぐに――」
「買い物はあとでいいから」
電話の第一声を聞いたときはママが怒っていると思ったけど。なんだか、様子がおかしい。
「あとでいいの?」
不思議に思っていると、狼狽えたようなママの声が返ってきた。
「ハルとヒロがいなくなったの」
「いなくなった?」
ハルとヒロというのは、わたしの弟だ。五歳の双子で、悠臣と宏臣という。
庭で遊んでいたふたりは、ママがベランダの洗濯物を取り込んでいるほんの五分くらいの短い時間でいなくなってしまったらしい。近くの公園を探し回ったり、近所のお友達のママに連絡をとってみたけど、どこにもいないのだそうだ。



