綺麗な顔をした和服の少年が、顔を強張らせるわたしとの距離を少しずつ詰めてくる。そうして、真正面に立つと、そっと右手でわたしの頬に触れてきた。
肌の白い少年の指は、血が通っていないかのように冷たい。けれど、わたしの目を真っ直ぐにジッと覗き込んでくる彼の青紫の瞳は、吸い込まれそうなほどに美しかった。
ドクン、と胸を鳴らしたそのとき。少年が眉根を寄せながら、息を吐く。
「十年かかってやっと巡り合えたというのに、顔を合わせてもおれがわからないとはな。これも清良様の神力が弱まった影響か」
「ちょっと待って。何の話ですか? あなたは誰? わたし、あなたにどこかで会ったことある?」
「まだ思い出さないか?」
少年が不機嫌そうに、目を細める。
そんなこと言われても、思い出すはずがなかった。わたしには生まれてこのかた外国人の知り合いなんてできたことがない。それなのに、しつこく絡んでくるなんて。もしかして、ストーカー的なやつなんじゃ……。
半年ほど前、わたし達がまだ中学生だった頃。リコちゃんが学校帰りの高校生の男の子にしつこく付き纏われて、ちょっとした問題になったことがあった。
わたしはモテるほうじゃないし、そんな話とは無縁だと思ってたけど。
リコちゃんの事件があったとき、「こういうのは、性別とか見た目とか関係なく、いつ誰に起こるかわからないから。知らない人には気をつけるように」と、学校の先生たちは生徒全員に注意を促した。
いつ誰に起こるかわからない。
たしかに、そのとおりだ。
中学時代の担任の先生の言葉を思い出して青褪めていると、目の前の少年が大人びた表情でふ、っと笑った。



