きょろきょろと境内を見回していると、本殿の陰にもうひとつ、石の鳥居があることに気が付いた。

 平屋の本殿よりも少し背の低い鳥居の奥には格子戸のついた木造の小さな社が置かれていて、その両端に石造の狛犬が向かい合うように鎮座している。

 あそこにも、お詣りする場所があったんだ……。

 小さな社をぼんやりと見つめていると、突然、向かって左側にいる狛犬の目がギラリと光った。

「何、今の……?」

 よく確かめようと目を擦ったとき、境内にザザーッと風が吹き荒れる。

 体の重心が傾きそうなほどの強い風。飛ばされないように、足を地面にぐっと踏ん張る。

 やがて風が吹き抜けて、木々のざわめきが治ったとき、また鈴の音がした。

 透明な、澄んだ音色。それに混ざって、低くゆったりとした声が耳に届く。

「かっこよくて素敵な彼氏が欲しい。それが、今のおまえの願いごとか?」

 驚いて振り向くと、わたしの隣に綺麗な顔をした和服姿の少年が立っていた。機嫌でも悪いのか、眉間に皺が寄るほど思いきり秀眉を顰めている。

 境内には誰もいなかったはずなのに。いったいどこから現れたのだろう。

 肩に軽く触れるくらいの長めの銀髪に、青紫の瞳をした少年の容姿は、かなり日本人離れしていた。

 年齢は、見た目的にわたしと同じくらいか、もしかしたらいくつか上かもしれない。瞳の色によく似た群青の着物と灰銀の袴を着た立ち姿が、やけにさまになっていた。