考えているうちに、ふと、同じ高校に通うことになったリコちゃんの声が耳に蘇った。

「高校生になったんだし、彩寧もそろそろ彼氏でも作んなきゃね」

 小学生のときから男の子にモテモテなリコちゃんと違って、わたしは片想いの相手すらいない。だけど、リコちゃんの恋バナをいつも聞かされているわたしだって、恋愛や男の子に興味がないわけじゃない。

 実は、入学式のときに隣に席に座った同じクラスの男の子が笑顔が爽やかでかっこいい子で。「好き」と言う気持ちまではいかないけれど、ほんの少しときめいた。

 数日前に高校生になったばかりのわたしは、新生活にちょっぴり期待しながら、神様に手を合わせた。

「やっぱりこれだな。わたしにも、かっこよくて素敵な彼氏ができますように……」

 目を閉じて、口の中で小さくつぶやく。

 そのとき、チリンと小さな鈴の鳴る音がして、後ろ髪がふわりと風に揺れた。

 また、鈴の音――? 

 ハッとして、目を開ける。だけど、神社の境内にいるのはわたしだけ。

 こんなに何度も同じような空耳が聞こえることってあるだろうか。もしかして、近くに首輪をつけた猫でもいるのかな。