「げ、また階段?」
やっとたどり着いたと思ったのに、石作りの鳥居の向こうには急勾配の長い石段が伸びている。本殿に行くには、この石段を上らなければいけないらしい。
石段の真ん中辺りには、石の鳥居よりは少し小さめの赤い鳥居が立っていた。両側には高木の緑が生い茂っていて、神社の本殿まで続く木のトンネルみたいになっている。緑の中に赤の鳥居が佇むその景色は、神様のいる場所に相応しく幻想的だった。
しばらく迷ったあと、わたしは本殿に続く石段を上ってみることにした。
特別願いごとがあるわけではないけれど、二十分もかけてここまで来たのに、何もせずに引き返すのは悔しい。
ゆっくりと時間をかけて、長い石段を上る。
真ん中の赤い鳥居をくぐり抜けて石段の一番上に足をかけたとき、正面に木造の本殿が見えた。境内が狭くて神主さんがいる気配もないけれど、整備の行き届いた綺麗な神社だ。
真っ直ぐに本殿に進んでいくと、賽銭箱の前に垂れ下がっている鈴緒を片手で握る。
鈴を鳴らそうとして、お賽銭がないことに気が付いたわたしは、おつかいのためにママに渡された財布から五円玉をひとつ拝借させてもらった。
お願いごとをするとしたら、なんだろう。
早く新しいクラスに馴染めますように、かな。それとも、新しい友達ができますように?