緑道を歩いて中央公園の入り口のそばまで来ると、道路を挟んだ向こう側に駅が見えてくる。
わたしの目的地は、駅前の商業施設の中にあるスーパーだ。
スーパーなら家の近くにだってあるのに、ママがわたしにお使いを頼むときは、必ず駅前のスーパーを指定する。ママによると、このあたりでは、そのスーパーが一番安いらしい。
安いと言っても、値段の差は数十円くらいなのに。主婦ってケチだよなぁと思う。
ママは「節約だ」って言うけど、お使いの度にわざわざ家から遠いスーパーまで歩かされるわたしの苦労も少しは考えてほしい。
道路を駅のほうに渡るために中央公園の入り口前の横断歩道で信号待ちをしていると、背中から風が吹いてきた。
何気なく振り返ると、公園の入り口から伸びる長い階段の上のほうから、ピンクの花びらがひらひらと舞い落ちてくる。
「そういえば、中央公園って毎年桜が綺麗だよね」
風に流されて降ってくるピンク色を眺めていたわたしの口から、ひとりごとがこぼれる。
中央公園の広場にはソメイヨシノの木が何本も植えられていて、春になるとお花見目当ての人たちがやってくる。
今年の桜の開花はいつもの年よりも遅かった。満開の時期は既に過ぎてしまったけれど、数日前に行われた高校の入学式のときにはまだ桜が咲いていたし、中央公園の広場の桜も、まだ散りきらずに残っているんだろう。