とぼとぼと歩いていると、妙に外が騒がしかった。
廊下の窓から外を見ると、雨が降っていた。
遠くの空はオレンジ色をして明るいのに。

僕はそんな不思議な空模様を見つめていた。
見つめているうちに、雨はどんどん強くなって、廊下の窓をずぶ濡れにしていく。

「傘、持ってないや」

僕の声は、ざあざあとけたたましい雨音に消された。
窓から離れて、再びとぼとぼと歩き出す。

今日は最終下校時刻の五時半は免除されているけど、もう六時過ぎだ。
さすがにこんな時間に残っている人はいない。
文化祭実行委員か、よっぽど準備が間に合っていないクラスぐらいだ。

階段に向かって歩いていくと、階段の方からかすかに声が聞こえる。
この場所からでも、狭い階段の壁に声が反響しているのがよくわかる。
段ボールを抱えた男子生徒とすれ違いざまに、僕は何の気なしに階段の踊り場に踏み込んだ。
そして、目の前に現れた光景に、思わずさっと廊下の壁に身を隠した。
そして息の音すら漏らさないように、口を手でぐっと押さえつけた。
だけど、心臓の高鳴りは抑えられない。
カッターシャツの上から、心臓の音と、胸の痛みをぎゅっと抑え込んだ。