あいつに短期のバイトに誘われたのは、もうすぐ夏休みを迎える7月の中頃だった。
僕はいつものように学校帰りにあいつを自転車の後ろに乗せて、肩にあいつの手の重みを感じながら、あいつのバイト先に向かっていた。
あいつがバイトをしている語学カフェで、お盆明けに「日本の縁日」というイベントをすることになったらしい。
語学カフェの外国人講師たちが、カフェの体験入店をする日本人のお客さんを縁日でもてなすというイベントだそうだ。
要は、新規顧客の開拓だ。
ちゃんとバイト代も支給される。

とはいえ、僕は受験生だ。
受験生の身としては、この「勝負の夏休み」を一日たりとも無駄にはしたくない。
三年になってから塾にだって通い始めた。
忙しいこと極まりない。

ただ僕がそんな時期にこのバイトを了承したのは、あいつがタダで家庭教師をしてくれると言うからだ。
その言葉に魅かれる。
なぜなら、あいつはすごく頭がいいからだ。