沈黙に答えを任せるなんて、ちゃんと言わないなんて……。


「勝見君は、ずるよ……」


ぽつりとこぼれた声に、怒りが滲んだ。

「連絡もしないでさんざん人のこと放っておいたくせに、今さら何? 他の男の子とちょっと親しくしてたぐらいで、勝見君にとやかく言われる筋合いないよ。そんなこと言うなら、留学なんてしなきゃいいじゃん。私が信じられないなら、行かなきゃいいじゃん。それとも何? 勝見君は私と園田君がどうにかなった方がいいと思ってるの? 園田君に私を押し付けてまで留学したいの?」

「そんなんじゃ……」

「そうだよね。私と別れる口実になるもんね。私が彼女じゃ恥ずかしいもんね。かわいくもない、勉強もできない、性格もこんなめんどくさい彼女。ただのお荷物だよね。留学したら、私よりもずっといい人見つかるかもしれないもんね。美人で頭もよくて、勝見君に釣り合う人に出会うかもしれないもんね。そんな時私が日本に残ってたら、邪魔だもんね」

「だからそんなんじゃ……」

こらえていた気持ちをほんの少し出したら、もう止まらなくなっていた。
まだ出る、まだ出る。
今まで言えなかった、すべての言葉が。
そして、言いたくない言葉まで。

「彼女にするんじゃなかったって思ってるんでしょ? 好きにならなきゃよかったなって思ってるんでしょ?」
「坂井さん……」
「勝見君は、私のことなんて好きじゃないんだよ」
「なんでそうなるんだよ」

その鋭い声に、体にビリビリっと電流が流れたようだった。
さっきの火傷よりも、ずっと痛い。
指先が、口元が、足元が、体中が、急に震えだした。

こんな激しくて大きな声、勝見君から聞いたのは、初めてだった。
普段、何かに対して怒りをあらわにすることも、苛立ちを表に出すこともないのに。
いつだって冷静で、穏やかで、優しいのに。

厳しい視線と言葉に、ぐっと胸に押し寄せてくるものが喉に痛い。