勝見君とやってきたのは、部室棟の並ぶ校舎の裏側だった。
ここにも祭りのための準備が及んでいた。
文化祭のための備品やセットだけでなく、体育祭で使う競技の道具や機材、入退場門なんかも置かれている。
他にもペンキやら工具やらゴミ袋やらがまとめて置かれている。
だけど人は、誰もいない。
私と勝見君だけ。
遠くの方で文化祭会場で流れている賑やかな音楽や、生徒の声が聞こえてくる。
同じ校内にいるはずなのに、全然知らない場所に来たみたいでなんとなく心細くなる。
ここに到着するころには、勝見君の歩くペースも落ちていて、それでも私たちは並んで歩くことはなかった。
何も言わず、だけど手だけはぎゅっとつながれていた。
「まだ痛い?」
不意に勝見君の声が耳に届いた。
「あ、ううん。もう大丈夫」
そう、もう大丈夫だった。
いつの間にか、大丈夫になっていた。
火傷をしたことなんて、すっかり忘れていた。
それは園田君の応急処置のおかげなのか、それとも、勝見君と出会ったからなのか。
勝見君と会って、昨日の話を思い出してしまったからだろうか。