「こういうの、漫画っていうの。」
私は小雪ちゃんとお仙さんに自作の4コマ漫画を見せた。
「も、もちろん、私、絵を描けないから、この丸と棒で人のつもりだけど... 」
「でも、物語がわかりやすくて楽しいですね!」
「そうなの。物語をセリフを中心に進めて、情景の描写を絵で表すっていうか。」
「なるほど・・・」
「小雪ちゃんならもっと綺麗な絵が描けるでしょう? だから読む方は物語に飲み込まれていくと思うんだ。」
お仙さんも小雪ちゃんも目を輝かせている。
「もし楽しそうだなって思うんだったら物語を作ってみたらどうかな。冊子を作って売り出すといいと思うの。小雪ちゃんの絵、お金稼げるレベルだと思うし。」
「わ、わたしが絵でお金を稼ぐ? で、できるでしょうか。」
「わぁ、小雪ちゃん、やってみなよ。」
お仙さんが背中を押してくれる。
「でも、私、絵はかけるけど、物語は…」
私はもうひと押しと思い、ぐいっと体を乗り出す。
「それなんだけど、私、少し案があるんだ。」
こうしてタカオ山手習い所に尽世初の漫画部ができることになる。
「オヌシ、何かまた面白そうなことを始めたらしいな?」
オババ様も漫画のことを聞いて興味を持ったみたいだった。
この尽世で漫画を広めたいって思ったのにはいくつかの理由がある。
最近、伊の国で、木版画の技術が飛躍的に進んだらしく、上流階級の人向けには新聞みたいな瓦版や、公文書の解説書や、小説が安く出回り始めた。
でも、庶民は字が読めないし、娯楽もあまりない。
「手習い所で基本的な読み書きを教えてるけど、まだまだ公文書や瓦版なんて読めるほどじゃないから、漫画だったら内容を理解できるかなって思って。」
「なるほどな。」
「さらにそれを読みたくて、もっと字を勉強しようっていう子もいるかなって。」
「確かに、楽しみのためなら皆、勉強も苦じゃないものだ。良き案じゃ。」
でも、漫画を推し進めるもう一つの理由はまだ誰にも言ってない。
それは、鬼武者のイメージ改善だ。
題して、鬼武者(伊月さん)の好感度アップ大作戦!
―― だって、大好きな人のこと悪く言われてばかりは辛い。
だから、小雪ちゃんやお仙さんに持ちかけたストーリーのアイディアは鬼武者をモチーフにしたものだ。
「すごく強くて怖がられているけど実は恋仲の女性には優しいとか、実は孤独を抱えてるとか、実は影ですごい活躍をしてるとか、実は○○みたいなのを想像して描いてみたら面白いと思うんだ。」
結構前のめり気味に、私のアイディアを話すと、二人とも目をキラキラ輝かせて、それは面白そうと、乗ってきてくれた。
―― ギャップに惹かれるのはどの世界でも一緒のはず
ついでにいうと、有名な人が、実は○○だったって話は歌舞伎では定番のストーリー展開だ。
尽世の人にもこれがウケるといいんだけどな。
「でも、まぁ一番大切なのは皆が楽しめることだから、自由に色々創ってみてほしいな。」
気がかりは、当の本人の伊月さんのことだ。
悪い噂をされても全然動じていない鋼の精神の持ち主だけど、漫画にされるのは嫌がられるかなぁ。
―― でも本人が「人は物語を作るのが好きなんだ」って言ってたし…いいよね?
「あの、それから、お仙さん、少し相談があるんですけど、いいですか?」
「え?那美様が相談なんて、珍しいですね。どうしたんですか?」
「それが、あの、翼竜を倒したことがきっかけだと思うんですが、手習い所に通いたいという人が爆発的に増えて…。」
「そりゃそうですよ。今では那美様は皆の憧れの巫女様ですから!」
「でも、このままじゃ一人じゃ手が回らなくて。それに、私、しばらく都に行かなくちゃいけなくなって。」
「え?都にですか?わぁうらやましいです!」
「まだいつ行くかは決まってないんですけど。でも、私が不在の間もお仙さんに教えてもらえたらすごく助かるんですが。」
「え?」
「お仙さんは、もう一通り、読み書きも算術もできるようになって、今だって若い人が質問がある時に教えてあげてるじゃないですか?そろそろ先生の役をして頂けたらと思って。どうでしょう?」
「私が先生?」
「はい。もちろん報酬を出します。手習い所の運営も滞りなくできてますし。」
それに、私の作ったライターの売れ行きも良くて、追加注文が入った。
経済的にはかなり余裕が出てきている。
「私が教えてもいいんですか?」
「はい。お仙さんしかできる人いないです。教えて下さると、すごく助かります。私が都に行っている間も、ここを閉めなくていいし。」
「確かにここが閉まると行き場をなくしちゃう子もいますもんね。わかりました。お引き受けします!」
「ありがとうございます。すごく頼もしいです!」
お仙さんと話し合って、今まで通り、私が週に2日教えて、お仙さんも週に2日教えることになり、手習い所は週4日稼働になった。
都に行っている間はお仙さんのできる範囲で回してもらうことになった。
私は小雪ちゃんとお仙さんに自作の4コマ漫画を見せた。
「も、もちろん、私、絵を描けないから、この丸と棒で人のつもりだけど... 」
「でも、物語がわかりやすくて楽しいですね!」
「そうなの。物語をセリフを中心に進めて、情景の描写を絵で表すっていうか。」
「なるほど・・・」
「小雪ちゃんならもっと綺麗な絵が描けるでしょう? だから読む方は物語に飲み込まれていくと思うんだ。」
お仙さんも小雪ちゃんも目を輝かせている。
「もし楽しそうだなって思うんだったら物語を作ってみたらどうかな。冊子を作って売り出すといいと思うの。小雪ちゃんの絵、お金稼げるレベルだと思うし。」
「わ、わたしが絵でお金を稼ぐ? で、できるでしょうか。」
「わぁ、小雪ちゃん、やってみなよ。」
お仙さんが背中を押してくれる。
「でも、私、絵はかけるけど、物語は…」
私はもうひと押しと思い、ぐいっと体を乗り出す。
「それなんだけど、私、少し案があるんだ。」
こうしてタカオ山手習い所に尽世初の漫画部ができることになる。
「オヌシ、何かまた面白そうなことを始めたらしいな?」
オババ様も漫画のことを聞いて興味を持ったみたいだった。
この尽世で漫画を広めたいって思ったのにはいくつかの理由がある。
最近、伊の国で、木版画の技術が飛躍的に進んだらしく、上流階級の人向けには新聞みたいな瓦版や、公文書の解説書や、小説が安く出回り始めた。
でも、庶民は字が読めないし、娯楽もあまりない。
「手習い所で基本的な読み書きを教えてるけど、まだまだ公文書や瓦版なんて読めるほどじゃないから、漫画だったら内容を理解できるかなって思って。」
「なるほどな。」
「さらにそれを読みたくて、もっと字を勉強しようっていう子もいるかなって。」
「確かに、楽しみのためなら皆、勉強も苦じゃないものだ。良き案じゃ。」
でも、漫画を推し進めるもう一つの理由はまだ誰にも言ってない。
それは、鬼武者のイメージ改善だ。
題して、鬼武者(伊月さん)の好感度アップ大作戦!
―― だって、大好きな人のこと悪く言われてばかりは辛い。
だから、小雪ちゃんやお仙さんに持ちかけたストーリーのアイディアは鬼武者をモチーフにしたものだ。
「すごく強くて怖がられているけど実は恋仲の女性には優しいとか、実は孤独を抱えてるとか、実は影ですごい活躍をしてるとか、実は○○みたいなのを想像して描いてみたら面白いと思うんだ。」
結構前のめり気味に、私のアイディアを話すと、二人とも目をキラキラ輝かせて、それは面白そうと、乗ってきてくれた。
―― ギャップに惹かれるのはどの世界でも一緒のはず
ついでにいうと、有名な人が、実は○○だったって話は歌舞伎では定番のストーリー展開だ。
尽世の人にもこれがウケるといいんだけどな。
「でも、まぁ一番大切なのは皆が楽しめることだから、自由に色々創ってみてほしいな。」
気がかりは、当の本人の伊月さんのことだ。
悪い噂をされても全然動じていない鋼の精神の持ち主だけど、漫画にされるのは嫌がられるかなぁ。
―― でも本人が「人は物語を作るのが好きなんだ」って言ってたし…いいよね?
「あの、それから、お仙さん、少し相談があるんですけど、いいですか?」
「え?那美様が相談なんて、珍しいですね。どうしたんですか?」
「それが、あの、翼竜を倒したことがきっかけだと思うんですが、手習い所に通いたいという人が爆発的に増えて…。」
「そりゃそうですよ。今では那美様は皆の憧れの巫女様ですから!」
「でも、このままじゃ一人じゃ手が回らなくて。それに、私、しばらく都に行かなくちゃいけなくなって。」
「え?都にですか?わぁうらやましいです!」
「まだいつ行くかは決まってないんですけど。でも、私が不在の間もお仙さんに教えてもらえたらすごく助かるんですが。」
「え?」
「お仙さんは、もう一通り、読み書きも算術もできるようになって、今だって若い人が質問がある時に教えてあげてるじゃないですか?そろそろ先生の役をして頂けたらと思って。どうでしょう?」
「私が先生?」
「はい。もちろん報酬を出します。手習い所の運営も滞りなくできてますし。」
それに、私の作ったライターの売れ行きも良くて、追加注文が入った。
経済的にはかなり余裕が出てきている。
「私が教えてもいいんですか?」
「はい。お仙さんしかできる人いないです。教えて下さると、すごく助かります。私が都に行っている間も、ここを閉めなくていいし。」
「確かにここが閉まると行き場をなくしちゃう子もいますもんね。わかりました。お引き受けします!」
「ありがとうございます。すごく頼もしいです!」
お仙さんと話し合って、今まで通り、私が週に2日教えて、お仙さんも週に2日教えることになり、手習い所は週4日稼働になった。
都に行っている間はお仙さんのできる範囲で回してもらうことになった。