どれくらい眠っていただろう。


月明かりの少ない夜、外は雨が降っている。

床で眠っていたせいで身体のあちこちが軋む。


電気をつけるよりも先に、廊下から各部屋の様子を伺う。

明かりが漏れている部屋は自室だけで、物音ひとつしない。


ドア横にある照明のスイッチを押すと明るさに目が眩んで、糸のように細く細めてやり過ごす。

壁にかかる時計を見ると、時刻は二十二時半を過ぎていた。


軽く四時間は経過している。

もう一度廊下に顔を出すけれど、やっぱり人の気配はどこにもない。


こんな時間まで、葵衣が日菜といるのは考えにくい。

日菜の行動も葵衣の返事も、わたしの予想を裏切るものばかりで、今更予想外が起きても驚かないけれど。


ふと、ポケットの中に入れていた携帯を取り出すと、慶からのメッセージが入っていた。


【 葵衣、俺の家に来たから今日は泊める 】
【 日菜は葵衣が家に送ったから心配するな】


十九時過ぎに届いているから、あの後葵衣は真っ直ぐに日菜を家に送り届けて慶の家に行ったのかもしれない。

ほっとする反面、とてつもない孤独感に襲われた。


葵衣は、日菜と慶、両方の気持ちを知っている。

その上で日菜に返事をして、慶の家へ行くなんて、何を考えているのだろう。

そんなに、わたしのいる家には帰りたくなかったのか。