真っ暗な廊下の壁を手探りで伝い歩き、自室に雪崩込む。
床に敷かれたラグに転がり、手近に落ちていたコットン生地の乾いたハンカチで右手の傷を拭う。
小さな傷とはいっても、雑に血を拭き取ったせいで新しい血が滲んだ。
仰向けに寝転がり顔の真上に手を上げる。
もう一度、傷を抉るように左手の爪を立てると、鮮血がぽたりと頬に落ちた。
こんな行為に意味はない。
薄いカーディガンの袖を伸ばしたって手の甲は隠れないし、第一わたしの高校の制服は半袖しかないから、どうしたって隠せない。
土日を跨いだところで、月曜日の朝に瘡蓋になっていれば上々だ。
横向きに体勢を変えて目を閉じる。
ハンカチで押さえた傷の辺りがじくじくと疼いて熱を持っている。
窓から入り込む夕陽の残り火から逃れるように、身体を丸め、痛みだけを享受した。