「そうか。ゼンさんは、そのために息子さんと連絡を取ろうとしてくれていたんだね。すごく仲が悪いと言っていたのに……」

「一晩中考えて決心したんだ。とっくの昔に縁を切ってるし、迷惑を掛けるのは承知の上だが、俺の家族は、もうマサヨシだけしかいない。向こうの親父さんたちだって絶対納得しないだろうが、いいんだ、これで全部終わりにする。俺の家族は、もう俺だけだ。元妻も母親も他界した。俺にはもう、息子だっていないと思えば、――それだけで俺の世界は完結するんだろう」

 たとえば施設の職員たちは全員敵であると、少し前まで自分が、彼ら一人一人が同じ人間として様々な感情を抱えてここで仕事に励んでいるだなんて、そんなことさえ思わなかったように。

 ミトさんが、向日葵が見られないのは残念だけれど今の生活が幸せだ、とつい最近まで微笑んで、自分たちがそれを、彼女の頭の中の作り話の設定であると気付かずに過ごしていたように。