「…………お前が言う通りだ、俺はひどい父親だったよ。でも、聞いて欲しい。一生に一度のお願いだ。もうここから出してくれとは言わんし、それが終われば、今後一切お前には連絡もしないと約束する。だから、今週のうち一日――いや、半日でもいいから俺にくれないか。お前が望むのなら、ひどい父親だったと遺書に残してすぐにでも死んでやるから!」

 ゼンさんの必死の叫びが、フロア中に反響した。カウンターにいた看護師たちが驚いたように振り返り、カワさんが仰天した様子で目を剥く。

『…………それ、本気で言ってる……?』

 電話越しに、訝ってマサヨシが問う。ゼンさんは「本気さ」と間髪入れず答えた。

「介護していた母親も、ずいぶん前に息を引き取った。もう俺自身が、だから覚悟も出来ている。お前が直接関わりたくないのなら、代理人を立ててくれてもいい。俺たちの保護者となれる運転手を探しているんだ。今週いっぱいのうちに、ミトさんに向日葵畑を見せたい。――出来るだけ早いうちに。彼女が、移送されてしまう前に」