「押さえつけろ! じゃないと彼女が怪我をしてしまうぞ! 興奮状態で力の加減が分からないんだ!」
「シーツと枕で! 足が悪いのよ! 出来るだけ刺激しないで!」
「トバ! 右を抑えろ! しっかり固定するんだ! 整体で鍛えた腕だろうがっ、ちゃんと役立てやがれ!」
「テメェはテメェで、そっちをしっかり押さえてろクソ医者! おいマサキッ、骨が弱いから気をつけろよ!」

 ゼンさんとカワさんは、たまらず部屋を飛び出して彼女の部屋を塞ぐ職員たちに「一体何をしてるんだ!」と怒鳴りつけたが、しばらく騒ぎが大きすぎて誰も気付いてくれなかった。

 その直後、「注射」「安定剤」「眠らせる」の単語が飛び交い、二人はぎょっとした。自分たちの嫌な想像が、机上空論から現実味を帯びて戦慄が走る。

「やめろ! 俺はミトさんが健康なのを知ってる! 彼女は病気じゃない!」
「お願いですから、ミトさんにひどい事はやめてください! 彼女はただ、向日葵を見に行きたいと調べていただけなのに、口封じするみたいに――」

 ゼンさんとカワさんが、入口に佇む看護師をどかそうと突っ込んだところで、看護師たちがようやく二人に気付いた。オカメ看護師と長身の中年看護師が「やめなさい!」と怒鳴って、慌ててゼンさんたちを廊下へ押し戻した。