イトミネ婆さんは、九十歳を越えている入園者だった。量の少なくなった真っ白なチリチリの髪、どんよりと曇った瞳は、色素が薄くなって少し白みかかっている。
肌は雪のように白く、顔の染みやいぼが遠くからでもハッキリとした。手足は細く、ふっくらと垂れ下がった皺の肌には、大きさがまばらな浅黒い染み以外にも、打撲に似た小さな痕がはっきりと浮かび上がっている。
二人が注意深く辺りを窺っていた時、一台の車椅子がこちらに近づいてきた。
カワさんが頬を染めて小さく飛び上がる様子を視界の端に認めて、ゼンさんは誰が近づいてきたのか分かった。眉間の皺を浅くして、出来る限りの微笑を浮かべて振り返る。
「やぁ、こんにちは、ミトさん」
「はいはい、こんにちは、ゼンさん」
そこにいたのは、今年七十八歳になるミトさんだった。白い髪は艶やかで量があり、ふっくらとした桃色の頬も可愛らしい。小さな丸い目は愛嬌たっぷりで、年齢だけでなく背丈もカワさんと同じくらいだった。
肌は雪のように白く、顔の染みやいぼが遠くからでもハッキリとした。手足は細く、ふっくらと垂れ下がった皺の肌には、大きさがまばらな浅黒い染み以外にも、打撲に似た小さな痕がはっきりと浮かび上がっている。
二人が注意深く辺りを窺っていた時、一台の車椅子がこちらに近づいてきた。
カワさんが頬を染めて小さく飛び上がる様子を視界の端に認めて、ゼンさんは誰が近づいてきたのか分かった。眉間の皺を浅くして、出来る限りの微笑を浮かべて振り返る。
「やぁ、こんにちは、ミトさん」
「はいはい、こんにちは、ゼンさん」
そこにいたのは、今年七十八歳になるミトさんだった。白い髪は艶やかで量があり、ふっくらとした桃色の頬も可愛らしい。小さな丸い目は愛嬌たっぷりで、年齢だけでなく背丈もカワさんと同じくらいだった。