オカメ看護師は、落ち着いた声色で淡々と話した。ゼンさんとカワさんが茫然としていると、途端に化粧で目力が強くなっている目をギロリと細める。

「要るんですか、要らないんですか?」
「あっ、要ります!」
「読みますから処分はしないでっ」

 強い口調で問われ、ゼンさんとカワさんはほぼ反射的に声を上げていた。すると、オカメ看護師は憮然とした態度のまま、無愛想にこう告げた。

「そうですか、じゃあ時間を見計らって私が一つずつダンバール箱を持ってきますから、読む分の本を引き抜いておいてくださいね」

 そう言って彼女が踵を返した時、カワさんが「あの!」と声をかけた。自分がここにいることを咎められるのではないかと思って、実は車椅子なしでも結構動けるんですとバレるような状況に対して、今まで必死に言い訳を考えていたのだ。

 扉を開けたオカメ看護師が振り返り、何よ、文句ある、という顔で彼を一瞥して顔を顰めた。

「慌てて変な人ですね。そもそも普段からあなた方がココに集まっているのは知っていますから、余計な説明は今更要りません」