「なるほど、確かにそうだな。――おや、そうするとカワさん個人としては、俺の喫煙をなんとも思わないってことなのかい?」
「良くはないと思うけど……その、ミトさんも言っていたんだけどさ、煙草を吸うゼンさんも、すごくかっこいいだろうなぁと思って、見てみたい気もする」
「なんだそりゃ」

 ゼンさんは、小さくなった黄ばんだ歯を覗かせて、渇いた笑みを浮かべた。カワさんは途端に小さくなり、身体をもじもじさせて顔を伏せると「だって、ゼンさんは生き様もかっこいいんだもの」と口をすぼめた。


 その時、扉のノック音が響き、ゼンさんとカワさんは飛び上がった。ゼンさんの椅子がガタっと音を立て、カワさんの下でベッドが軋みを上げる。


 その直後に「失礼します」と形上だけの挨拶を述べて、問答無用で開けるよと言わんばかりに扉を開けて入ってきたのは、むっつりと下唇を突き出した、あのオカメ看護師だった。