カワさんはここ数日、この時間帯にちょろりと訪れては、彼の体調を考えて早々に切り上げていく日々だった。その際に一階の様子や、職員たちのことを教えてくれるのだ。

「なんだかゼンさん、また痩せたね。すごく細いのに、手なんて枝みたいだよ」
「まぁ風邪じゃないだけましさ。余計な薬は使えねぇから、俺の場合は風邪を引いてもアウトだ。今回は、肝臓の機能をカバーしてる他の臓器が、ちっとばかし無理をしたらしい」

 雨で体調が安定しないせいで、医者を部屋まで寄越されて、夜には必要な分の点滴まで受けたしまつだ。

 病気について思案していたカワさんが、ようやく思い至ったような顔をしてこう言った。

「そういえば、腎臓の機能がどうのって言っていたね」
「おぅ。歳を取ると天気の悪さが体調にもかかってくるから、厄介だな」
「うん、あっちもこっちも大忙しだよ。食堂で食べている人はほとんどいないし、配膳なんかも全部キッチンの人がやっていたくらいだから」

 カワさんは膝に負担を掛けないように心がけながら、椅子をベッドに寄せて大きな尻を詰め込んだ。両肩をすぼめ、両足の間に手を押し込む。