ああ、三人で暮らせたら、どんなにいいだろう。

 ゼンさんは笑顔をそっと曇らせ、目尻に皺を刻んだ。もうそろそろ、二人は自分の部屋に戻らなければならないだろう。彼はまた、たった一人、ここでじっと時間が過ぎるのを待たねばならないのだ。

 最近はミトさんの勧めで、初心者ながら読書を始めていたので、一人過ごす時間の苦痛も半分に減ってくれていた。しかし、窓の外を見るたび、高い柵で囲まれた施設内の小さな部屋にいる自分を思って、ここが監獄であることを想像した。


 いつか向日葵をと前向きに言ったミトさんは、愛之丘老人施設について詳しく書かれた資料を読みに、カワさんは朝食後の睡眠を取りに部屋へと戻っていった。


 しばらくすると、たくさんの足音がゼンさんの部屋の前を通過し、奥の寝室にいた老人が、がらがらと音を立てる寝台で運ばれていく音が聞こえてきた。

          ◆◆◆

 全国的な雨期が日本列島を訪れたのは、奥の部屋の老人が病院へと移った翌日からだった。重い雲が空を覆い、朝から景色が霞むほどのひどい土砂降りになった。