「肝硬変って、大変ねぇ」

 ミトさんは、薬の多さに目を丸くしたが、カワさんは別のことが気になっている様子ようで、妙にそわそわしていた。

 就寝前の用意を整えていた彼女の髪が、背中に流れて色っぽいせいか、とゼンさんが推測した時、カワさんが不意にこう言葉を切り出した。

「皆は薬を飲むために一階で看護師たちといるのに、どうしてゼンさんは部屋で?」
「ああ、俺のは副作用が出る代物でね。きっちり時間をずらして飲まなくちゃいけないし、薬が切れてしまっても厄介なことになる。『俺が飲むタイミングを管理しなければ駄目だ』と激しく抗議してクレームをつけてからは、ご覧の通り、奴らの監視の目もなく飲めるってわけだ」

 ゼンさんは、手を広げて「こればかりは言い負かしてやったよ。譲れねぇ部分だったからな」と主張した。

 すると、ミトさんが不思議そうに首を傾げた。

「でも、一階で一緒に飲んだほうが安心じゃないかしら? だって薬剤師や医師が指導してくれて、飲用を丁寧に手伝ってくれたりするでしょう?」