親族に許可をもらって申請を通せばとはいうが、そんな愛之丘老人施設が、介護が必要ないからとはいえ、入園者三人の外出をまとめて許可するだろうか。

 ゼンさんの表情から悩ましさを見て取り、ミトさんは心配そうに続けた。

「私たちが警戒されている可能性は、あると思うわ。だって施設の現状を見ていて、正確にそれを外へ訴えることが出来るもの。彼らの切り札と言えば、私たちの言動がすべて架空のものだと、レッテルを張れることかしらね」
「じゃあ初めっから、まともな経営すればいいのにな」

 ゼンさんのぶっきらぼうな物言いを聞いて、カワさんが同意するような苦笑を浮かべた。まともな意見だと思ったのだろう。遠慮がちに口元に笑みを浮かべるが、その困ったようにも見える表情は複雑な心境を映してもいた。

「確かにここの方針はむかつくが、改革なんてのは無理だろうし、どこの老人ホームだって同じようなものだと俺は思ってる」

 そもそも、とゼンさんは言葉を続けた。