三人はこうして、来客が多い日はよくゼンさんの部屋に集まっていた。やろうと思えばそれなりの行動力を起こせるのは、自分たち三人だけだとも感じていたから、何か企んでいるのではないかと疑われるのも嫌で、職員にその様子を悟られたくない考えもあった。

 カワさんが、廊下側の穏やかな静けさに耳を済ませた後、窓の外を眺めるゼンさんの横顔に視線を投げた。

「何か見えるかい?」
「庭園を自慢げに紹介している、例の人気があるあの男の医者と、その取り巻きの若い男の医者の連中。入園者と家族が一緒に庭園の散歩をしている様子を、奴らが視察の連中に紹介してるのが見える」

 そう答えるゼンさんの声には、刺があった。彼をここに放り込んだ一人息子が『建物の外に出さないでくれ』と告げ口したため、まだ一度も庭園に足を踏み入れたことがないのも苛立ちの理由の一つだ。

 長年やめられなかった毎日の酒に加えて、肺の機能を著しく悪くした大量喫煙もある。建物から出たら煙草をやるかもしれませんよ、と律儀にも彼は念を押していったのだ。