過去は変えられない。深く拒絶されたのも、あの頃のツケが回ってきたせいだ。取り戻せないモノもあるけれど、こうして彼らに出会えた自分は、気遣ってくれる家族もいないという孤独感で死ぬことはないだろう。

「――父さん」
「あ?」

 不意に名前を呼ばれ、ゼンさんは足を止めて振り返った。随分向こうに、ロケットペンダントを握りしめたまま立ち尽くしているマサヨシの姿があった。

 マサヨシが、ぱっと顔を上げてこちらを見た。弱々しく顰め面をしているので、ゼンさんが「なんだよ」とぶっきらぼうに声を投げると、彼はポケットにペンダントを押し込んで勢いよく足を踏み出した。

「あのさっ、せっかくだから皆で、他のコーナーも見ていかないか? だって彼女は、あと数日であの施設からいなくなってしまうんだろう?」

 半ば駆けるようにして、マサヨシがそう続けた。

 向日葵園の中央通路で二人の距離が近づいて、今度は手の届く距離で向かい合った。


                     了